前年度までに非リン酸化Entner-Doudoroff (np-ED)経路を構成する7種の酵素および、乳酸デヒドロゲナーゼの計8種の酵素遺伝子を(超)好熱菌より取得し、Escherichia coli Rosetta2株に導入し、その活性を確認した。これらの株を熱処理し、宿主由来の酵素を失活させることで、耐熱性酵素のみが活性を有する酵素モジュールを得た。8種の酵素モジュール、グルコース、補酵素を加えることで、乳酸の生産に成功した。しかしながらグリセルアルデヒドやグリセリン酸など副生成物が生産されること、反応途中で反応が停止することが確認された。そこで平成27年度は律速段階が生じないよう、酵素量の調整を行ったところ副生成物の生産が抑制でき、収率100%での乳酸生産に成功した。また宿主由来の酵素が完全に失活しておらず、そのため補酵素のATPが分解することで反応が停止することが明らかとなり、ATP量を増やすことで反応の停止を回避することができた。 次に8種の酵素遺伝子を単一細胞内で発現する組換え体の作成を行った。np-ED経路を構成する9種の酵素遺伝子を任意の3塩基突出末端を付加するためのベクターにクローニングした。DraIII制限酵素によって、各酵素遺伝子の断片化を行った後、枯草菌・大腸菌シャトルベクターとライゲーションし、枯草菌よりプラスミドを抽出し、大腸菌に再導入を行った。本大腸菌を超音波破砕し熱処理することで、耐熱性酵素カクテルを得た。8種の酵素について、それぞれ活性測定を行ったところ、個別発現株に比べて活性がおとるものの、全ての酵素活性が確認でき、np-ED経路の酵素遺伝子の集積に成功した。 本耐熱性酵素カクテルを用いたところ10mMのグルコースから13mMの乳酸のバッチ生産に成功し、耐熱性酵素モジュールの調製の簡便化とこれを用いた物質生産に成功した。
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