研究課題/領域番号 |
25820406
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
福田 展雄 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (00613548)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酵母 / 交雑育種 / 自己倍数化 / 接合 / 増殖制御 |
研究概要 |
交雑育種法では、接合型の異なる2種類の酵母(a型およびα型)を製造する必要があるが、同一の親株から派生した酵母どうしが接合する自己倍数化現象が、交雑体の製造効率を低下させる。そこで本研究では、自己倍数化を回避するための接合抑制技術を技術基盤として、接合型を変換する技術の開発を行うことで、酵母の交雑育種を促進することを研究目的する。 平成25年度は、染色体異常を利用して、酵母の接合型を変換する技術の開発に従事した。産業利用されている酵母の多くはa/α型の接合型を有しているが、これらを培養していると、1万分の1以下の低頻度で染色体異常が発生して、a型もしくはα型の酵母が出現することが知られている。しかしながら、染色体異常はそもそもの発生頻度が極めて低いため、a型もしくはα型の酵母を単離するには多大な労力を要する。そこで、目的の接合型(a型もしくはα型)を有する酵母のみを単離するために、酵母の増殖制御技術を確立することとした。 まず、ウラシル合成に関与するURA3遺伝子を選択マーカー遺伝子として起用し、URA3をa型もしくはα型細胞特異的に発現させるための発現ベクターを構築した。構築したベクターをa型、α型、a/α型の実験室酵母に対して導入し、ウラシル欠損培地中でa型もしくはα型の酵母のみを生育させることに成功した。さらに本増殖制御技術および接合抑制技術を組み合わせて用いることで、a/α型の酵母から派生するa型およびα型酵母を単離可能であることを実証した。当実験に用いた酵母株では、染色体異常が100万分の1から10万分の1程度の頻度で生じていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画通りに、a型もしくはα型細胞特異的なURA3選択マーカー遺伝子発現技術を確立することができた。遺伝子発現特性の制御は、プロモーターおよび転写制御因子の選択と、発現プラスミドの細胞内コピー数を調節することにより達成された。さらに平成26年度に計画に記載していた、a/α型の実験室酵母(BY4743株)からのa型およびα型酵母の単離を実現することができた。以上の結果より、当初の計画以上に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
現在に至るまでは実験室酵母を用いて、本技術の実現可能性を評価してきた。今後は、産業利用されている実用酵母に対しても、本技術が適用できるかを調査していく必要があると考えている。そこで醸造用酵母など広く分譲されている菌株を入手して、モデルケースとして利用することを検討している。ただし、実験室酵母と異なり、これらの実用酵母に使用できる選択マーカー遺伝子は限られている。そこで、これらの菌株に対応するために、選択マーカー遺伝子の検討を行い、実用酵母由来のa型およびα型酵母を創製していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の主要項目であった選択マーカー遺伝子URA3をコードする発現ベクターの構築において、計画当初は発現プロモーターや転写調節因子の検討に必要であるとしていた物品費が不要になったため。a型もしくはα型細胞特異的なプロモーターとして、複数の候補から最適な発現ベクターを探索する計画であったが、a型に対しては既存のSTE2pが十分な発現特性を示したこと、およびα型に関しては新たなプロモーターHOpをクローニングしたが、転写調節因子については既存のα2を用いることで、目標とする発現特性を実現できたため、当初の計画を変更して次のステップへ進むこととした。 平成26年度は、実験室酵母のみならず、実用酵母に対しても本技術の適用可能性を試験する。そこで酵母株の入手に加えて、実用酵母に使用が可能な選択マーカー遺伝子を、発現ベクターに導入するための物品費として使用する。
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