人工衛星の長寿命化や軌道間輸送技術の構築にあたって,広範な作動条件下においてエンジンの高効率運転が不可欠であり,そのためには液体推進薬の良好な微粒化を常時達成することが必須の課題である。そこで,人工衛星用エンジンに多用される,二液を衝突させて微粒化を行う方式の推進薬噴射装置を対象として,微量の気体噴射(マイクロジェット噴射)を付加した新たな微粒化促進方式の効果を実証するとともに,微粒化促進機構を解明し,実機搭載の可能性を検討することが本研究全体の目的である。 本研究では研究期間内に,マイクロジェット噴射による微粒化促進効果を実証し,流れの詳細を理解するために,実験と流体数値解析の両者を実施した。まず,平成25年度は,マイクロジェット噴射の効果を,可視化と粒径計測により調査した。対応する流体数値解析を実施し,微粒化促進機構を解明することに成功した。具体的には,マイクロジェット噴射時の気液二相流れは,衝突点における気液動圧比と相対ウェーバー数の2つの無次元数によって整理できることが明らかになった。それを受けて,平成26年度は,マイクロジェット噴射条件を,噴射時間,噴射速度,噴射孔径等について変化させて,最適なマイクロジェット噴射条件を実験により探索した。また,微粒化特性予測に向けた,流体数値解析手法を構築した。具体的には、気液界面をオイラー的に追跡する手法に、微細粒子をラグランジュ的に追跡する方法をシームレスに接続することで、液体噴射から噴霧流動までを一貫して解析できるようになった。実験と数値解析の手法を開発しながら,両者を適切に使用することで,当初の目的を計画通り達成できた。
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