本研究は, (1)ソーラーセイルの姿勢軌道運動モデルの高精度化とそれに対応した軌道上でのモデル推定手法の導出,(2)モデル誤差に対してロバストなソーラーセイルの姿勢・軌道誘導制御手法の導出,の2つ方向のアプローチにより,実用ミッションで要求される高精度なソーラーセイルの姿勢・軌道誘導手法を確立することが目的である.
研究最終年度であるH28年度においては,(1)に関して,深宇宙軌道上の宇宙機の軌道上データを用いて,前年度に導出した高精度かつモデル推定が容易な計算負荷の小さい太陽輻射圧モデル化手法の有効性を評価した.十分に高い精度でのモデル推定が可能であることが分かった一方で,推定しきれない小さな系統的な誤差の存在も確認され,太陽輻射圧のさらなる精緻化(二次反射の取り込み等)や太陽輻射圧以外の外乱要因(熱輻射など)の取り込みによってさらなる高精度化の可能性も示唆された. (2)に関しては,本研究で導出した,(相対的に簡易な太陽輻射圧モデルを前提とした)ソーラーセイルの最短時間姿勢マヌーバを用いて,ソーラーセイルの姿勢・軌道の同時最適化問題を現実的な計算コストで解くとともに,高精度な輻射圧モデルとの間のモデル化誤差を補償する誘導制御方法を提案し,ソーラーセイルの姿勢・軌道十分な精度で誘導することができた.
以上により,研究期間全体を通じて,研究目的(1)および(2)は達成できたと考えている.
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