圧縮性流体の数値流体力学(CFD)手法はほぼ確立していると言われているが,一方でそれぞれの速度域においては,特有の課題が未だに残っている.例えば高速流れでは,衝撃波を数値的に捉える際に不安定性が生じる事が知られている(例:カーバンクル現象).また低速流れでは,圧縮性流体の解析手法をそのまま適用すると,過度の散逸により解に誤差が生まれてしまう.こうした中,研究代表者らは高速・低速・混相流の統合解析新手法としてSLAU2を提案している.最終年度では,このSLAU2について, 1)高速流れにおける更なる検討 2)低速流れにおける高解像度版HR(High-Resolution)-SLAU2の検討 を行い,それぞれを国際学術誌に掲載した.1)では,SLAU2単体の性能評価に加え,制限関数との組み合わせ方,内挿変数の選び方によって解の振る舞いが変化し,マッハ5以上の極超音速空力加熱の予測精度に影響が出る事を明らかにした.そして,複雑な衝撃波干渉を伴う極超音速空力加熱計算に推奨される手法の組み合わせを提案した.2)では,マッハ数が10のマイナス4乗の低速流れからマッハ1以上の超音速流れまで幅広く解像度を向上できる事を示した. なお,SLAU2が混相流で使用できる事は,既に前々年度に示してある.またSLAU2は本研究の期間中にJAXAの標準コードにも実装され,ますます多くの方々に使っていただいている.以上より,今後は新しい統合的流体計算手法として,SLAU2を世界で広く使っていただけるものと期待している.
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