研究課題/領域番号 |
25820410
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横田 茂 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30545778)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザーアブレーション / 高繰り返し周波数 |
研究概要 |
本年度の研究成果は以下の通りである. まず,レーザー駆動パラメータにより,発生する力積の変化を明らかにした.具体的には,連続パルスレーザーの繰返し周波数,単位面積あたりのレーザーエネルギー(フルエンス)を変化させて,照射回数を増やすに連れて,力積がどのように変化するのかを計測した.レーザーはNdYLFレーザーを,ターゲットにはアルミニウムを用いた.この結果,繰り返し周波数が1~10kHzまでの間では,発生力積に影響を与えないことが分かった.また,発生力積はレーザー照射回数の増加に伴い徐々に減少するが,フルエンスを6~24J/cm^2まで増加させると,フルエンスが高いほうが力積が発生しなくなる照射回数が大きいことが分かった. 次に,徐々に力積が変化する原因を追求するため,反射計測用積分球を用いて反射光の全方位について積分した量を計測し,照射回数を増加させるに従い,反射率に変化があるか計測を行った.この結果,照射回数に対する反射率の変化は,明確な変化は見られなかった.これは,計測誤差が大きく,ばらつきが多いことも1つの要因であった. また,どれだけガスを発生したかを計測するため,当初はマノメータで計測する予定であったが,感度に問題があったため,レーザー照射前後でのターゲットの質量変化を計測することで,ガス発生量を見積もることとした.まだ全てのパラメータについて取得していないが,例えば計測したパラメータでは,1パルスあたり,15ngの質量がエジェクトしていることがわかった. 一方で,照射箇所を電子顕微鏡にて観測したところ,照射箇所周辺に一度エジェクトしたターゲット材料が,再付着している様子が観測された.従って,これらの手法から正確な質量変化を見積もることは困難であるとわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に行なう予定のうち,レーザー駆動パラメータによる発生する力積の変化,レーザー反射率の測定までは行い,ガス発生量計測の一部までは終了している.これら実験の予定については,若干の遅れが存在するものの,一方で,次年度以降に行う予定であった数値解析については,すでに手を付けている状態であり,総合的に判断して,概ね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は,レーザーアブレーション現象中のエネルギー収支を明らかにすることである.しかしながら,本年度の結果から,実験的に全てを明らかにするのは困難である用に予想される.これは,当初の予定よりも計測のばらつきが多かったため出ある. そこで,次年度は,現象観測のため,数値解析により注力することとする.本年度得られた測定結果は,数値解析の検証に用いる.一方で,更に精度の良い測定の可能性についても継続して検討する.たとえば,高真空環境維持可能な装置を導入する,あるいは反射計測用積分球ではなく,曲面ミラーを用い,直接反射光を計測する,等を検討している.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度使用予定であったマノメータ等は研究室所有のもので計測可能であるとの判断から購入を見合わせた.また,ビームプロファイラは他の研究用に購入したものを使用したため,本予算から支出の必要がなくなった. レーザーアブレーションによるターゲットからのガス発生量の計測が困難であったのは,現存の真空装置の真空環境に問題があったためであることがわかったため,次年度以降に高真空環境を維持できる真空系を購入予定である.
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