本年度(平成26年度)は、最初に昨年度(平成25年度)に得られた結果に関して考察を実施し、以下に示す内容を実施した。実験に用いた供試機関は電子制御式の舶用2ストロークディーゼル機関(3UEC33LS2-ECO)である。また、希釈器としてISO8178に準拠した希釈トンネル(ミニトンネル)、ロータリーディスク型希釈器、エゼクタ型希釈器を使用した。また、個数濃度の計測、粒径分布の分級と濃度計測には、SMPSおよびELPIを使用した。 ・燃料油の硫黄分濃度が粒径分布に及ぼす影響を把握するために、硫黄分0.73mass%のA重油(JIS1種2号油)を用いた機関運転を行い、フィルター捕集重量によるPM濃度計測、SMPSによる粒径分布計測(ホットダイリューション)、ELPIによる2段希釈後粒径分布計測を実施した。燃料油中の硫黄分濃度は、PM重量濃度の増加に起因することが既往の文献によって報告されているが、本実験ではフィルター捕集重量による濃度の増加量を把握するとともに、ホットダイリューションによる高温状態排ガスの粒径分布計測結果から粒子の高温時核生成状態の変化を把握した。また、2段希釈による計測から、フィルターに捕集されているPMの粒径分布を把握した。 ・運転時の要因が排出されるPMに及ぼす影響として、機関の掃気温度とシリンダ冷却水温度を変化させる実験を行いPM重量濃度および粒径分布計測を実施した。これらの運転要因は、船舶の減速航行時に対応した低負荷率運転として実験を実施した。また、燃焼状態の把握を試みるためPM計測と同時にNOx等のガス成分分析も実施した。計測では、シリンダ冷却水温度による、シリンダ油蒸発量に起因する核生成状態の変化とともに、燃料油の未燃状態排ガスに起因すると思われる核生成状態、掃気温度の変化による未燃状態排ガスの変化も観察された。
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