現在、世界的にはエネルギー資源の枯渇、化石燃料を利用した発電や発電所事故による環境破壊など、エネルギー生産システムに関して様々な課題を抱えている。こうしたことから、安全かつ環境に配慮した発電システムの必要性もより一層高まっており、再生可能エネルギーのさらなる利用が検討されている。これからの広がりが期待される海洋探査艇へのエネルギー供給も自然エネルギー利用先として重要である。渦励振と呼ばれる物理的現象を活用することが本着想の最も重要な点である。理由は2つある:(1)タービンや水車のような現在主流の発電方法は回転運動が主体である。それに対して渦励振は、直線的な運動を取り出せる。風や水など自然界に直に暴露される機器において回転部の不具合による事故や故障は後を絶たない。一方、直線的な運動は回転運動に比べて機構が単純化でき自然界に直に設置する機器の機構としては、よりふさわしいと考えた。(2)渦励振は流れの中に置かれた細長い物体の振動現象である。細長い物体はその細さゆえに景観に与える影響を少なくできる。本研究では、これまでに得られた知見をもとにして、極力、景観に配慮した機器設計を行ったうえで、発電量を向上させるために、「円柱を並列させる」という一工夫を加えその効果について検討した。潮流からエネルギーを吸収するために、細長い物体が流れの中で起こす振動を利用する方法を検討してきた。この方法は、タービンの様な回転機構を含むものとは異なり、直線運動のみを利用するものであり、機構をシンプルに構成できる。自然界に設置するデバイスとして有望と考え、その性能を実験にて検証した。本年度は特に、円柱を並列に配置させることでエネルギー効率の増大をはかるとともに、振動が極力大きくなるレイノルズ数での実験を行うために装置を新たに作成し水槽にて実験を行った。その結果、エネルギー変換効率の向上が確認できた。
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