日本周辺海域には海洋資源となりうる未発見の海底熱水鉱床の存在が予想される。また、既知の熱水鉱床周辺海域には熱水由来の特異かつ貴重な化学合成生態系が存在し、今後、これら熱水鉱床の開発を実施するに際し、周辺生態系に対し環境影響評価をすることが不可欠である。そのため、採鉱時にどの程度の濃度の重金属等を含む懸濁物質が発生・拡散・堆積し、周辺海域の生態系に影響を及ぼすか、懸濁物質を計測することで把握する必要がある。しかしながら現在用いられている濁度計は点計測のみであり、懸濁物質の特性や拡散状況を空間的に把握するためのデータ量としては圧倒的に不足しているのが現状である。 上記のような背景を受け、本申請課題の目的は、超音波流速計(ADCP)による熱水鉱床の探査および開発時に発生する懸濁物質濃度および粒径分布の非接触三次元計測である。 本年度は、沖縄県八重山諸島の竹富島等の浅海海底熱水噴出域において、ADCPの反射強度データを取得した。これらの計測データと前年度に開発したADCPの音響送受信伝播モデルを統合することで当該海域の懸濁物質濃度の空間分布を算出した。さらにADCPにより計測された3次元流向流速データを用いることで当該海域における懸濁物質の挙動を把握することが出来た。
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