架橋で本土と結ばれていない瀬戸内海の島嶼部では、近接する本土への生活依存度が高い一方、フェリー・高速船といった海上交通が唯一の交通手段である。過疎化、高齢化の著しい島嶼部では、今後も更なる人口の減少が予測されており、フェリー、高速船の利用客の減少に伴う航路の縮小、さらには廃止も懸念される。そこで、本研究は、今後も架橋が見込めない島嶼部が近い将来直面するであろう海上交通の問題を解決するための方策の提案を行い、その効果を検証することで、持続的な海上交通の実現を目指す。 2年間の研究計画は以下の通りであり。平成25年度は、①海上交通に対する利用実態と利用意識の把握、②海上交通を3者で支える支援体制の確立。平成26年度は、③港の集約化による基幹航路の高頻度運航の可能性の検証、④多港寄港便の実現可能性の検証、⑤離島内陸上交通と海上交通を統合したデマンド型の公共交通システムの実現。 実施時期が前後するが、平成25年度に①と⑤に関する分析を行い、研究成果を発表している。今年度は、②、③、④を中心に研究を進めたが、③、④に関しては、運行管理者であるフェリー会社の運行形態、ひいては経営環境を大きく転換させる困難さがあることから、②の研究に重点をおいた。特に、過去に実施したフェリー利用者アンケートおよび島民アンケート調査の結果を用いて、島民のフェリー利用に関する意識調査の分析を行った。この成果は、学会にて発表報告を行っている。また、コーホート要因を用いて、今後の離島の人口推計および高齢化に伴う利用者の減少傾向を示した。さらに、フェリーへの路線バスの乗り入れによるシームレス交通の実現可能性についても過去のヒアリング調査および文献調査により検討した。
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