研究実績の概要 |
パイロシーケンサーによるメタ16S解析で優占細菌として検出されたFirmicutes門未培養細菌(以下標的細菌)の機能解析のため,アルカン分解メタン発酵共生培養系からメタゲノム解析を行った。得られた配列をアッセンブルしそのコンティグから16S rDNA配列の抽出と系統解析を行った。メタ16S解析結果と異なり, 標的細菌と考えられる配列は細菌35配列中3配列のみであった。これはバクテリア毎に16S rDNAのコピー数が異なり,メタ16S解析では実際の数より標的細菌を過大評価した可能性も考えられた。今回のメタゲノム解析に用いた培養系DNAでは標的細菌の集積が不十分な可能性もあったが,データベースに標的細菌と近縁細菌のメタゲノム情報が公開されたので,それをテンプレートに標的細菌ゲノムをde novoアッセンブルした。その結果,コンティグ数113,総塩基数2,477,083で2,467遺伝子が推定された。更に推定遺伝子群の代謝経路解析の結果,β酸化経路とホモ酢酸生成に関わる遺伝子群の殆どを有していた。更に嫌気的アルカン分解初発酵素のアルキルコハク酸合成酵素に高い相同性を持つ遺伝子を有した。これらの結果は,標的細菌がアルカンをアルキルコハク酸合成酵素で脂肪酸とし,脂肪酸はホモ酢酸生成で代謝される可能性を示唆し,更にメタ16S解析で酢酸資化性メタン菌が優占種だったことから,『標的細菌がアルカン代謝・酢酸生成→酢酸資化性メタン生成菌によるメタン生成』という流れが予想できた。また,好温性水素資化性メタン菌2株の水素資化速度パラメーターと,メタン発酵によるATP生産効率の指標⊿Gcを解析した。その結果,水素親和性および最大水素資化速度には有意差はなかったものの,⊿Gcに有意差が見られ,ATP生産効率の差が水素資化性メタン菌の優占化に寄与する可能性が示唆された。
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