研究課題
本研究は,ドーソナイトの形成・保存条件を明らかにすることで,二酸化炭素地中貯留の長期的な反応シミュレーションや,これに基づく安全性評価の精度向上を目的とする.さらに,ドーソナイトが観察される地域の,特異的な過去環境を明らかにすることも併せて目的とした.本年度は,野外調査によりドーソナイトの観察・採取を行うとともに,実験的にその合成を試みた.野外調査は,大阪府泉南市の和泉層群内にて行い,ドーソナイトを含む泥岩を採取した.現在,ドーソナイトの産状記載を行うとともに,母岩や他の炭酸塩鉱物 (方解石等) との共存関係についての観察を進めている.さらに,ドーソナイトの形成をもたらした流体の起源を明らかにする目的で,その化学分析を予定している.室内実験では,反応系を単純化するため,ドーソナイトを構成する元素のみを系内に導入し合成を試みた.その結果,塩化アルミニウムコロイドと水酸化ナトリウム,炭酸酸水素ナトリウムを系内に共存させ,170℃まで昇温することでドーソナイトの合成に成功した.しかし,塩化アルミニウムコロイドと水酸化ナトリウムの混合溶液に,二酸化炭素を加圧し反応系を酸性条件にさせたケースではドーソナイトの形成は確認できなかった.現在は,実験結果の解析と同時に,長期 (数週間から数カ月) の反応実験を進めている.また,今後は反応系内に自然界で観察される元素を混入させた条件で合成を試みる予定である.
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10.1002/ggge.20283