研究課題
若手研究(B)
東京大学の球状トカマク合体実験装置UTSTでは、新しく増強・設置されたトロイダル磁場コイルと平衡磁場コイルにより、センターソレノイドを併用した合体実験でプラズマ電流:310kAを達成した。この改造により、典型的な合体時のポロイダル磁場は、4mTから17mTまで増加した。この条件下で多チャンネルイオンドップラー分光器を用いて合体前後のイオン温度を計測したところ、合体前におよそ15eVだったイオン温度が、合体によって短時間(およそ5マイクロ秒)で50eVまで上昇することが確認できた。核融合炉に近い条件、つまり真空容器外に磁場コイルを配置した合体実験装置で合体時のイオン温度の上昇を世界で初めて観測することに成功した。一方、静電プローブアレーを用いた実験では、合体中に二流体効果によってアウトフロー領域に急峻な径方向電場が形成され、イオン加熱に寄与していることが分かった。また、合体中の電子加熱や密度の変化を測定するためにYAGレーザーを用いたトムソン散乱計測器が整備され、実測に向けて準備中である。イギリス・カラム研究所の球状トカマク実験装置MASTでは、空間130点トムソン散乱計測により、合体の初期からX点で電子が直接加熱され、空間的に鋭い電子温度のピークを形成することが分かった。また、合体終了後にアウトフロー領域で加熱されたイオンを介して電子が加熱され、ポロイダル平面で円形な構造を形成することが分かった。新たに導入された多チャンネルイオンドップラー分光器により、合体中のイオン加熱の詳細も分かるようになり、イオンがアウトフロー領域だけでなくX点でも直接加熱されていることが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
トムソン散乱をはじめとする計測器の整備などが遅れ気味ではあるが、主たる目的である合体時の電子加熱・イオン加熱に関してはUTST・MAST双方の実験装置で順調に行われているため。特にイオン加熱に関しては両実験装置で初めて合体時の加熱を測定する事に成功し、合体時の加熱機構が大分明らかになってきた。
東京大学のUTST装置については、合体実験放電のメンテナンス、磁気コイルアレーや静電プローブアレーおよび各種計測器の整備・修理を行い、トムソン散乱計測器による電子密度・温度の測定を目指す。中性粒子ビーム実験の整備を行い、合体生成された球状トカマクの加熱・維持を目指す。また、セパレーションコイルを用いて合体の制御ができるかを検討し、導入するか否かを決める。イギリス・カラム研究所のMAST装置における実験は全て終了し装置がシャットダウンしたため、今後は得られた実験結果を用いて、合体時の電子加熱・イオン加熱双方のデータを引き続き詳しく解析し、学術論文に研究成果を発表する事を目標とする。
イギリス・カラム研究所の球状トカマク実験装置MASTが予定より早くシャットダウンしたため、イギリスに出張する予定の旅費が執行できなかったため。次年度使用額は主に、東京大学柏キャンパスに出張し、球状トカマク合体実験装置UTSTで実験を行うことに充てる。
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