研究課題
東京大学の球状トカマク合体実験装置UTSTでは、トロイダル磁場コイルや平衡磁場コイル、センターソレノイドなどの全ての磁場コイルが真空容器外に設置されているという「核融合炉に近い条件」を持つ世界初の合体実験装置であり、センターソレノイドを用いない合体実験ではプラズマ電流80kA、センターソレノイドを併用した合体実験ではプラズマ電流300kA超を達成した。また、合体時のイオン温度の上昇(~50eV)をドップラー分光計測により、電子温度の上昇(~15eV)をYAGトムソン散乱計測により、世界で初めて観測した。静電プローブアレーを用いた合体実験中の浮遊電位計測では、合体時に誘導電場による分極と強い外部磁場により、合体のX点付近で浮遊電位の四重極構造が観測された。イギリス・カラム研究所の球状トカマク実験装置MASTでは、合体の初期からX点近傍で電子が誘導電場により強く加速され、鋭い電子温度のピークを形成することがトムソン散乱計測により明らかになった。ピークの大きさはガイド磁場に比例する。また中性ガス圧が低い場合は、アウトフロー領域で加熱されたイオンが合体終了後に電子を加熱し、電子温度分布がポロイダル平面で円形構造を形成することが分かった。合体中のイオン加熱に関しても32チャンネルドップラー分光計測により明らかになり、アウトフロー領域に加えてX点でもイオンが加熱され、トリプルピークを形成することが確認された。
3: やや遅れている
東京大学UTST実験では、PFコイル用の新電源の立ち上げが遅れ、中性粒子入射実験が遅れている。また、内部セパレーションコイルを真空容器外部に設置することで再検討をしている。イギリスMAST実験の成果は充分出ているが、成果発表が遅れている。
東京大学UTSTのPFコイル用新電源は平成27年度より運用開始予定なので、球状トカマクの高密度化を実現することで平成27年度中に中性粒子入射実験を行う。また、内部セパレーションコイルを真空容器外部に設置することを前提に再設計を行い、準備を進める。イギリスMAST実験の成果を学術論文雑誌に投稿する。
当初は26年8月に運用を開始する計画であったPFコイル用の新電源の立ち上げが遅れ、27年3月からの運用の予定となったため、26年度中に中性粒子入射に必要な球状トカマクプラズマの高密度化の実現が事実上不可能になってしまった。また、MASTの解析結果を学術雑誌に投稿する予定であったが、原稿に修正があり、27年度に投稿することになった。そのため、次年度使用額が生じた。
次年度使用額は、中性粒子入射実験とUTST実験装置・各計測器の整備、また論文投稿費用に充てる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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