研究課題/領域番号 |
25820437
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
近藤 正聡 東海大学, 工学部, 准教授 (70435519)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液体ブランケット / 電気化学インピーダンス / 酸化被膜 / トリチウム透過防止 / 耐食膜 / 鉛リチウム |
研究実績の概要 |
イットリア(Y2O3)やジルコニア(ZrO2)は、熱力学的に極めて安定であり、核融合炉液体ブランケットのトリチウム透過防止膜や耐食膜として期待されている。金属イットリウムと金属ジルコニウムの試験体を大気中において酸化させることにより、これらの酸化物を表面に形成させた。これらの試験体を液体金属中に浸漬させる前に、X線解析装置(XRD)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)等の分析を実施し、形成されている酸化被膜の厚さやクラックの存在などの性状を明らかにした。形成されている酸化被膜は、Y2O3、ZrO2共に膜厚が不均一であり、膜内には構成元素の濃度分布が存在している事がわかった。高温のアルゴン雰囲気下において電気化学インピーダンス計測が可能な装置を開発し、これらの酸化被膜を有する試験体に対して計測を実施した。これらの酸化被膜の性状について、気相中で電気的情報をオンラインで獲得する事に成功した。得られたインピーダンス情報をナイキストプロットとして纏めたところ、得られた容量性半円は歪んでおり、酸化被膜を含む界面構造はCPEを含む電気回路として評価できる事がわかった。これは、膜内に時定数の分布がある事が示唆しており、膜内に濃度分布が存在する事実によく合致する。また、この歪んだ容量性半円に対してフィッティングを行い、評価した膜厚は、EPMAの分析結果から評価した調和平均の膜厚に近い事がわかった。同時に、この測定手法の液体金属試験前に実施する高温条件の校正方法を見出したと言える。また、温度条件を変化させる事により、これまで十分に明らかにされていなかった酸化物の抵抗率(Ohm/m)などの物性の評価も可能である事がわかった。得られた抵抗率は、バルクの焼結体よりも一桁程度小さい事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本手法は、逆問題としての課題があり、オンライン評価における信頼性向上を図る必要があった。そこで、あらかじめ金属試験片に対して金属酸化処理を行い、対照する酸化被膜に近い性状の酸化被膜を形成させ、高温条件で電気化学インピーダンス法を行う事により、校正手法や計測精度の課題解決に見通しを得ることができた。現在は、高温不活性ガス雰囲気条件および高温液体金属鉛条件における計測結果が得られているが、これらの結果の妥当性を評価できた事により、今後進めるリチウムや鉛リチウムなどの高還元雰囲気下における計測の結果評価の精度向上に大きく寄与したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 酸素ポテンシャルと酸化物の安定性の相関評価 これまで、高温液体金属環境下への電気化学インピーダンス法の応用について集中的に実施し、計測により得られるインピーダンス情報の評価について大きく前進した。そこで、液体金属の種類を変えて、酸素ポテンシャルが低い条件における酸化物の挙動評価を実施する。その際、酸素濃度センサーにおいて酸素ポテンシャルの評価を試みる。 (2) コーティング材料の評価 MODやMOCVD法などにより製膜した被膜に対して、本研究で開発した電気化学インピーダンス法を応用し、高温ガス環境下における被膜の安定性や液体金属環境下における挙動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進み、消耗品のうち購入する試験片などの量が少なく済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究消耗品に使用する予定である。
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備考 |
受賞:日本原子力学会関東甲越支部学生研究発表奨励賞 (鈴木成実)
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