研究課題/領域番号 |
25820438
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
松本 新功 徳島文理大学, 人間生活学部, 講師 (50441598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 負イオン源 / 引き出し / 輸送 |
研究概要 |
核融合反応の母体となる核融合炉内のプラズマ生成・維持のため,熱核融合炉・実験炉では水素負イオンビームを用いた加熱方式を採用もしくは採用予定である.加熱効率を高める為,より高効率な負イオン源開発が求められているが,基盤知識となる負イオン源の動作原理が現状では明らかになっているとは言い難い.本研究では,実験データを高い精度で再現する計算コードを開発する.このようなコードから得られる計算結果は,実イオン源内部のプラズマで生成されたH-がどの様なプロセスを経て,どの様にイオン源より引き出されているのかを明らかにするための信頼性の高い情報源となり得る為,負イオン源開発にインパクトを持つ知見を得る事ができる. 負イオン源からのH-引き出しには,イオン源からのH-取り出し口である「引き出し孔」近くのプラズマの空間電位構造が重要であると考えられている.H25年度は,この空間電位を計算するための2次元Particle In Cell(PIC)コードを新たに開発した.H-引き出しには,イオン源に印加する高電圧が起因する「浸み出し」と呼ばれる現象が鍵となると考えられている.今年度開発したPICコードの結果にも,実験と同様な浸み出し現象を確認することができた.実験データに対するさらに高い再現性を目指すべきではあるものの,H-引き出しを明らかにするためのツールとして良いものができつつある. また,このメカニズムを明らかにするためには,イオン源プラズマ内部でのH-の挙動を詳しく追いかける道具も併せて必要である.この目的のために,上記PICコードとは別に,Monte Carlo法による3次元H-の輸送コードを準備し,PICコードと組み合わせて使用する予定である.本コードは以前より我々が継続的に改良を加えてきた物であるが,H25年度はこちらのコードにも更なる改良を施し,更に信頼性を高めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は本研究期間以前に作成済みのPICコードを流用する事を予定しており,実際にこの旧コードに手を加えつつあった.しかしメモリ管理の方向性が適切ではなく,将来のコード改良時に問題が生じる可能性が明らかになり,コードを新規作成する方針に切り替えた.新コードの構築はあらかた完了し,現状は実験結果と同様の傾向を,ある程度再現することができるレベルに至っている.新コードでは,計算の安定性向上と高速化を目的として旧コードとは異なる解法でポアソン方程式を解くアルゴリズムを採用したが,コード作成時,このサブルーチンが期待した結果をうまく出せずに手間取り,完成までに予想以上の時間を要した.この点が影響して,予定していたH25年度の学会発表を見送った.同じ要因で,H26年-4月に終了予定であったコードの高速化作業が遅れている状態である. このPICコードでは,イオン源に対するkeVオーダーの高電圧印加時の浸み出し現象を,正しく再現できる完成度を目指している.当初,この高電圧の扱いが計算による実験データ再現の最大の壁となると考えていた為,H26年度の5-8月期に対策を講じるための時間を割り当てていた.しかしながら新コードでは,高電圧条件における実験と同傾向の結果を今の段階で既に再現できつつあり,予想よりも短期間でこの問題に対処できる可能性が見えてきた.以上により,ポアソン方程式のルーチン作成で予定外の時間を要したものの,そのロスを埋め合わせることができると考えている. また,PICコードの計算リソースとしてPCクラスタを使用する.H25年度は,システム構成の選定・購入・およびソフトウェアの設定を行った.なお,コードの特性を再度吟味し,システム構成を見直した結果として,予定していたものよりも更にPICに適したPCクラスタを選定することができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究の推進方策に関して,現状において大きな変更は考えていない.まずは,現在実施中のコードの高速化作業をH26年-6月中を目途に引き続き行う.その後,実験で計測した密度および電位の空間構造をより正確に計算で再現しうるよう,コードのブラッシュアップを図る.作業は主に,境界条件と粒子間衝突項の調整,ならびに計算領域外へ流出した粒子を領域内へ再投入するルーチンを煮詰める作業がメインになると考えている.この作業はH26年-10月頃まで実施予定である.また上記の通りH25年度に,使用するPCクラスタのシステム構成を見直し,予算の運用計画も見直した.その関係で,ネットワーク関連の一部部品の購入時期をH26年度へと変更している.この購入と組み込み作業をH26年度の8月を目途に行う.以上の作業を完了した後に,H27年-3月を目標に,ブラッシュアップしたコードを用いてイオン源内部のH-の輸送に関する計算,並びに結果の解析を行い,電位の空間構造との関連性を軸に,H-引き出しメカニズムを調査する. その後,H26年度に得られた知見をもとに,より高効率なイオン源に必要な構造を検討するフェーズに入る.まずはH27年-5月を目標にPICコードを改良し,イオン源内部の電極構造を柔軟に変更できるようにする.その上でH27-9月までに種々の電極構造による電位の空間構造,引き出し状態を計算し,最適な電極構造を探す.H27年度の残りの研究期間は,以上の研究成果の学会での発表,もしくは論文執筆に充てる.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では,複数台のパソコンで構成されるPCクラスタでPICコードを実行する.PIC計算は計算負荷の大きなシミュレーションであり,クラスタの性能が研究の成否を左右する可能性がある.パソコンパーツは短期間で世代交代が起こる.システム購入時における最善のシステムをチョイスするため,PICコードの性格を吟味し,コードにマッチしたシステム構成を再検討した.予算申請時から時間が経過し,パソコンパーツの性能が大きく変わっていた事,急激な円安が起こった事も手伝い,申請時とは異なる部品構成のパソコンでクラスタを構築した.以上の理由で,次年度使用額が生じた. 上記の通り,システム構成を計算コードに対してより適したものへと変更した.それに伴って予算の使用計画を見直し,クラスタに必要なネットワーク関連機器の一部をH26年度に購入するよう,購入時期を変更した.なお,これらの機器は,H25年度の計算コード作成作業時には必ずしも使用しない部品であり,研究の進捗には影響しないよう配慮している.この次年度使用額は,上記のネットワーク関連機材の購入予算として使用する予定である.
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