研究課題/領域番号 |
25820442
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
本多 充 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究員 (90455296)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トロイダル回転 / 新古典トロイダル粘性 / 径電場 / トカマク / トルク / 非軸対称性 / 摂動磁場 / 新古典輸送 |
研究実績の概要 |
トカマクに存在する磁場の非軸対称性が引き起こす新古典トロイダル粘性(NTV)を、3次元平衡コードVMECと3次元新古典輸送コードFORTEC-3Dを機構で開発しているトカマクプラズマ統合輸送コードTOPICSと連携して動かす枠組みを構築することで、JT-60UやJT-60SA、ITERの正確な3次元リップル磁場を反映した状況で計算が行えるようになった。さらに、JT-60Uの磁場リップル強度の異なる複数のLモード放電に対して統合モデルを適用することで、JT-60Uのトロイダル回転分布形成において新古典トロイダル粘性が大きな役割を果たしていることを明らかにした。 トロイダル回転分布の計算には境界の運動量を予測する適切なモデルが必要となる。JT-60Uでの高精度計測データを見直すことで、プラズマ境界においてプラズマの放電の種類によらず径電場の勾配がほぼゼロである実験事実を発見した。計測された径電場は新古典輸送モデルMatrix Inversionを用いて高い精度で再現可能なことを確かめた。径電場とトロイダル運動量は相互に連関しているため、径電場の勾配から境界のトロイダル運動量を導くモデルを開発・実装した。スクレイプオフ層の密度・温度勾配を計算するモデルと新古典トロイダル粘性計算を組み合わせることで、境界から中心まで一貫してトロイダル回転が計算できるようになり、JT-60Uの実験分布とも良い一致を示していることが分かった。 多流体方程式に基づく輸送コードTASK/TXは新古典輸送理論と高い整合性が求められるため、Matrix Inversionを拡張した。これまで広く用いられてきた新古典摩擦係数は衝突率が高い領域において適切でなくなる上、質量数の近い粒子種同士の衝突は正確に扱えなかった。質量比による近似を排したほか、より高次の新古典流の効果を低次の流れに繰り込むことで高精度の摩擦係数行列を導出し、それを数値実装することで新古典輸送モデルを拡張することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
物理モジュールの開発・整備について、平成25年度で進めた非軸対称磁場による新古典トロイダル粘性のモデリングをさらに発展させると共に、運動量の境界条件のモデルを開発した。これらのモジュールはTASK/TXに繋げられると共に、平行して開発している統合型輸送コードTOPICSにも適用可能であり、まずはTOPICSに結合してJT-60Uの実験との比較を重ねることでモデルの信頼性を確認し、向上させた。さらに、核燃焼プラズマでは質量数の近い粒子種(重水素、三重水素、ヘリウム)が主となるが、モーメント法に基づく既存の新古典輸送コードではモデル導出の際に課せられた近似により正確に取り扱う事が出来なかった。理論から見直してモデルを高度化させることにより、質量数の近い粒子種の摩擦も正確に表現できるように改良した。核燃焼プラズマへの適用に向けて物理モデルの開発が順調に進んでいる。これらの成果は、既に国際学会発表や論文発表もされている。磁気座標系TASK/TXの数値実装への最終的な検討が現在進んでおり、計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
TASK/TXに組み込むべき物理モデルの開発は概ね順調に進んでいるので、27年度はまず軸対称磁気面座標系における磁気面平均されたTASK/TXの支配方程式を数値実装する作業に移る。その作業は26年度末から既に着手しており、6月末の国際会議での発表を一つのマイルストーンに作業を進めている。数値実装終了後は、TASK/TXの放置会式計は既存の流体モデルに基づく理論体系と矛盾なく構築されているはずなので、新古典諸量や準線形粒子束などの理論式が数値的にコード内で再現できているかを調べると共に、標準的な拡散型輸送コードとのベンチマークを通じて数値実装の妥当性を検証する。作業の進捗状況次第では、プラズマ平衡の形状を反映するために必要な磁気面平均された幾何形状平衡諸量を計算する平衡コードと数値的に結合する作業に取り組む。TASK/TXにしかない特徴を活かした、両極性や径電場の発展に絡む問題に取り組んで、コードの特色を出した結果を示す方針で臨む。 TASK/TXはポロイダル・トロイダル方向の磁束や電場の時間変化をも解くため,各時刻において平衡コードとの間で矛盾なく平衡の変化を反映させるのは困難が予想される。その場合は、ひとまず計算の初期に平衡の諸量を読み込んだ後はそれらを時間的に固定し、平衡のダイナミズムが影響しない定常における分布形成などの物理課題に取り組む。また、これまで開発してきた物理モデルとの結合作業も進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
25年度に受賞した所内表彰(理事長表彰)による報奨として26年度の国際学会参加のための交通費を所属機関に賄って貰ったことが主因である。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は国内学会への複数回の参加や海外での国際学会の参加などに充当する形で使用する計画である。
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備考 |
「核融合プラズマにおける径電場を介した自己無撞着な輸送解析統合体系の開発」という題で、平成26年度日本原子力研究開発機構・理事長表彰・研究開発功績賞を筆頭受賞した。
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