研究課題
本研究は、メートル級大型負イオン源内にて使用するセシウムの添加量を最適化し、セシウムを有効利用するとともに、一様で高強度の負イオンビーム安定生成に向けて、イオン源内のプラズマ中のセシウムの振る舞いを実験的に明らかにすることである。セシウムを利用する負イオン源では、多量に添加されたセシウムのほとんどは十分に水冷されたイオン源壁に吸着する。これまでに、負イオン源内のセシウムの空間分布はプラズマ分布に酷似しており、セシウムはプラズマによってプラズマ電極まで輸送され負イオン生成に寄与することを定性的に明らかにしてきた。最終年度は、イオン源壁に吸着したセシウムと負イオンビームとの相関を調べた。そこで、負イオンビームの強度が飽和するセシウム量(>5 g)をイオン源内に添加した後、負イオンビームを長時間のプラズマ放電によって生成した。その結果、負イオンビーム強度は30秒を超えてから漸減した。この時のイオン源壁の温度と負イオンビーム強度を比較すると、温度が約70度からビーム強度が低下することが分かった。同時に、壁温度が70度以上になると、空間中のセシウム密度が増加することを見出した。これは、壁面の温度上昇に伴って吸着したセシウムが放出されたことを示している。これにより、プラズマ電極へのセシウムの供給量の差が生じ、プラズマ電極上での負イオン生成に影響を与えたと考えられる。この現象は、イオン源の壁面のセシウムの吸着量にも依存する。これらの現象は今まで明確にされていない新たな知見である。プラズマ電極だけでなく、イオン源の壁面のセシウムの挙動解明の重要性を示すことができたとともに、今後の負イオンビームの安定生成に向けて極めて重要な知見が得られた。
2015年原子力学会北関東支部「若手研究者発表会」にて優秀発表賞を受賞
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