研究課題/領域番号 |
25820447
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
松尾 陽一郎 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 特命助教 (90568883)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線 / 線量評価 / オリゴヌクレオチド / DNA鎖切断 / 蛍光 |
研究概要 |
放射線安全管理の分野では、線量評価手法としてTLD素子やフィルムバッジ等が実用化されている。これら既存の個人線量計で用いられるメカニズムは、熱ルミネッセンス現象やフィルムの感光作用などの物理・化学的作用を応用したものである。線量評価手法として、生体分子の損傷に基づく方法は望ましいと考えられる。一方で、放射線による生体影響の要因は、DNAを中心とした生体分子の損傷が主である。放射線による生体分子の損傷を高感度・簡便に検出する手法は、放射線による放射線安全管理分野にとって重要であると考えられる。 そこで本研究課題では、オリゴヌクレオチドを蛍光修飾したサンプルを用い、放射線による損傷量を蛍光強度にて読みとることで、高感度・簡便に検出する手法を開発する。オリゴヌクレオチドに切断が生じていない状態では、蛍光修飾分子に与えられた光エネルギーがクエンチャー物質へ移動し、熱エネルギーとして放出される。オリゴヌクレオチドに切断などの損傷が生じれば、クエンチャー物質による抑制効果が抑えられて蛍光が発せられる。このことから、放射線照射によるオリゴヌクレオチドの切断量は、励起光を照射した場合の蛍光量を介して評価できると考えられる。 若狭湾エネルギー研究センターにおいて治療用途のエネルギーの陽子線(LET:2.2keV/μm)を用いたビーム実験を行った。また比較のために、大阪大学産業科学研究所のコバルト60照射施設の60Co線源を用いてガンマ線(LET:0.2keV/μm)を照射した。 陽子線ならびにガンマ線の吸収線量の増加に伴って蛍光分子FAMの蛍光強度が増大することを確認した。蛍光強度はLETの高い陽子線の方が、低LETのγ線よりも高いことが明らかになった。本結果は低線量放射線による生体分子の切断量が蛍光を介して評価できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、蛍光修飾ヌクレオチドの切断に伴って生じる蛍光量と吸収線量、LETとの関係の明確化を行う計画であった。低LET放射線のガンマ線及び高LET放射線の陽子線の照射実験を実施し、LETによる効果を明らかにした。本研究の目標である低線量領域である数十Gyのオリゴヌクレオチドの切断量評価が可能である見通しを得ることができた。以上の結果から、概ね順調に進展している判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究を実用化に向けて進展するため、数十Gyでのデータについての精度の向上を目指す。低線量領域(数十Gy以下)において高感度で検出できる条件を抽出する。数分子のヌクレオチドの切断を検出できることを目標とし、検討対象としてオリゴヌクレオチドの配列、蛍光修飾、試料濃度等を候補とする。また、検出装置である蛍光分光光度計の条件検討を行う。特にオリゴヌクレオチドの最適配列の決定については、精度が最も高い評価を可能とするための重要な検討課題と考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費について、見積りを行った金額より、実際に使用した金額が低かったため。移動経路の変更が理由である。 研究のための物品費として必要であり、これに使用する。
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