平成26年度では,一過性脳虚血に伴うスナネズミ脳神経細胞障害に対するラドン吸入とアスコルビン酸投与による抑制効果に関して比較検討をした。しかし,検体数が少なく,細胞障害の程度のばらつきが大きかったことから,追加の実験が必要であった。 平成27年度では,一過性脳虚血に伴うスナネズミ脳神経細胞障害に対するラドン吸入とアスコルビン酸投与による抑制効果に関して詳細に検討をした。すなわち,スナネズミに,ラドン(2000Bq/m3)吸入またはsham (対照)吸入を各々24時間施した。他方,100,300,500 mg/kg体重のアスコルビン酸を腹腔内投与した。吸入または投与の直後に,両側の総頚動脈(CCA)を小血管クリップで10分間閉塞することにより一過性脳虚血を負荷した。その結果,一過性脳虚血に伴う細胞障害の悪化はラドン吸入,アスコルビン酸摂取により共に改善されたが,ラドン吸入による改善効果はアスコルビン酸500 mg/kg体重投与のそれと同程度であった。また,ラドン吸入のみの場合,脳中のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性や総グルタチオン(t-GSH)量が増加し,アスコルビン酸投与のみの場合においても同様に増加した。 以上の所見などより,本実験条件下では,一過性脳虚血に伴う神経細胞障害の抑制効果は500mg/kg体重のアスコルビン酸投与のそれに相当することが示唆できた。
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