研究課題
粒子・重イオン輸送計算コードPHITSは、照射損傷量DPA値を計算できる機能を実装しているが、検証に必要な高エネルギー領域(20MeV-1GeV)の陽子照射に関する実験データは存在しない。本研究では、極低温の環境下ではじき出し断面積と関連する、陽子照射欠陥に伴う電気抵抗増加を測定するための装置を開発することを目的とする。前年度までに、GM冷凍機を用いた小型照射装置を開発し、京大炉FFAG施設において125MeV陽子照射による銅のはじき出し断面積の測定に成功した。本成果を原子力材料の専門誌Journal of Nuclear Materialsへ投稿した。本年度は、国際ワークショップ Workshop on Radiation Effects in Superconducting Magnet Materials 2015 (RESMM'15)、及びはじき出し損傷に関する国際原子力機関の共同研究活動(IAEA-CRP)において成果を公表した。両会合において、世界的にも実験を行う研究者がいないことから、実験継続が強く要請された。また、新たに、アルミニウム及びタングステンの照射試料を製作し極低温まで冷却することに成功したが、FFAG加速器の故障のため照射試験は実施できなかった。しかしながら、研究期間全体を通じて、①小型の極低温陽子照射装置の開発、②125MeV陽子照射に対する銅のはじき出し断面積の測定、③国際会合や論文投稿による成果の公開を実施し、当初の目的を達成できた。今後の研究展開として、他の加速器施設における異なるビームエネルギー、ビーム種、材料を用いた照射試験を継続し、PHITSのモデルを改良して、加速器施設における照射損傷量予測の大幅な向上に繋げる。
すべて 2015
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IAEA, INDC International Nuclear Data Committee, INDC(NDS)
巻: 0691 ページ: 22-27