研究課題/領域番号 |
25820454
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
山崎 信哉 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 博士研究員 (70610301)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | モリブデン / ナノ粒子 / リポソーム / 難溶性塩 / 固相分析 / 99mTcジェネレーター |
研究概要 |
本研究の目的は、医療用99mTcを生産するための材料となるモリブデンナノ粒子の新規合成法を確立することである。効率的な系の構築を目指し、球状脂質二分子膜リポソームを用いた液相中におけるモリブデンナノ粒子合成法について検討を行う。 初年度(平成25年度)は、リポソーム内部にさまざまな陽イオンを封入し外部からモリブデン酸イオンを加えることで、リポソーム界面における難溶性モリブデン酸塩の生成について分析した。主に誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)を用いた液相分析および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた固相分析を行い、以下の知見を得た。 (1)リポソーム内部から流出する陽イオン(Ca2+, Mg2+, Mn2+, Fe3+)濃度の経時変化をICP-OESを用いて定量した。(2)脂質二分子膜を介したイオン移動について電気化学的手法を用いて検討した。(3)カルシウムイオンを用いてモリブデン酸塩の合成実験を行い、生成した固相をSEMにより分析した。これにより数百ナノメートル程度の粒子の生成を確認した。加えて、時間経過に伴いこれらの粒子が凝集してマイクロメートルサイズの粒子となることが分かった。 以上の知見をもとに50ナノメートル以下の粒子が得られる最適条件の決定に着手した。次年度(平成26年度)は引き続き、実験により得られるモリブデン粒子の固相分析を進め系の効率化を図る。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験により、リポソームを用いたモリブデンナノ粒子に関する基礎的なデータを収集した。さらに固相分析により数百ナノメートル程度のモリブデン粒子が確認できた。当初の目標は50ナノメートル程度としており粒径の制御については今後の課題であるが、リポソームを用いた基本的な実験系は構築できたと考える。これらの状況から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度(平成25年度)の実験により、リポソームを用いたモリブデンナノ粒子合成に関する基礎的な実験系が得られた。今後は各種イオン濃度、反応時間、温度など種々のパラメーターを変えることにより、モリブデン粒子の粒系制御に関して最適条件を求める。 現状は順調に進展していると考えており、計画の大幅な変更はない。 平成26年度から所属機関を変更したが実験設備などに大きな影響はなく、所属機関内の共通機器等の利用および数回の外部測定で遂行可能であり、研究を進める上で大きな支障はないと考える。
|
次年度の研究費の使用計画 |
目的とする50nm以下のリポソームが得られた場合、SEMでは詳細な分析ができないため、九州大学でのTEM測定を想定し旅費(1週間×4回)を計上していた。しかし、本年度得られたモリブデン粒子は凝集して粒径が大きかったためTEM分析を必要とせず、SEM分析により十分分析が行えた。実験系の構築についても予想よりスムーズに実験条件が定まったため、無駄なく予算が執行できた。これらの理由により次年度使用額が発生するに至った。 所属機関が変わったため、使用可能な装置にも若干の変化が生じた。このため卓上遠心分離器(10万円)、ゲルろ過用カラム(10万円)、試薬(20万円)を新たに購入する。その他、消耗品類および共通装置(SEM、TEM、XRD、ゼータサイザー)などの利用費(60万円)に充てる。 前所属機関での議論(2回)および学会参加のための旅費(30万円)も必要となる。また最終年度となるため、成果発表のための論文投稿費(10万円)も必要である。 以上の計画に沿って平成26年度の計画を進めていく。
|