研究課題
若手研究(B)
1.私たちは無数の記憶を整然と区別して処理することができる。記憶の独立性は、正常な認知機能の発現に不可欠である。個々の記憶に関わるニューロンが選択されるメカニズムを明らかにするため、学習、想起時に活性化するニューロンの可視化に取り組んだ。活性化ニューロンの大規模な可視化を実現するため、カルシウムイメージング法を導入した。前頭連合野にOGB-1もしくはFura-2を注入し、学習時の前頭連合野ニューロンの活動をイメージングした。学習時のカルシウム活動頻度の増大が認められた。今後、学習前、学習中の活動を経時的に観察し、解析を進めることにより、記憶を担うニューロンが学習前にどのような活動を示していたかを明らかにできると考えられる。2.ニューロンの活動をさらに大規模に観察するため、最初期遺伝子の発現を利用した解析も進めた。個々の記憶を覚えるとき、思い出すときに活性化する海馬CA1ニューロンを可視化した。そして、一部のニューロン集団の再活性化が個々の記憶の長期的な維持に関わること、このニューロン集団の維持には最初期遺伝子Arc/Arg3.1が関与することを明らかにした。また、学習後に発現が誘導されるArc/Arg3.1が、樹状突起スパインの刈り込みを引き起こすことを明らかにした。これらの結果から、Arc/Arg3.1によって樹状突起スパインが刈り込まれ、記憶を担うニューロン集団の活動が安定化し、最終的に記憶が長期的に維持されるというモデルが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
記憶を担うニューロン集団が選ばれるメカニズムを明らかにするため、学習前から学習中にかけてニューロンの活動を測定する手法の確立に取り組んだ。結果としてカルシウムイメージングを用いることで、多数の前頭連合野ニューロンの活動を測定することに成功した。
引き続き、学習中のニューロン活動の測定を行い、記憶を担うニューロン集団の特徴を見出す。また、記憶を担うニューロンからパッチクランプ記録を行い、膜電位の変動やシナプス入力を記録する。活動したかどうかだけでなく、膜電位変動やシナプス入力の特徴を記述する。さらに、光遺伝学的手法を用いてニューロンの活動を操作し、特定したニューロン集団が記憶の発現に関与するかどうかを検証する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (29件) (うち招待講演 1件)
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