研究課題/領域番号 |
25830003
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
眞部 寛之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80511386)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 嗅皮質 / 睡眠 / 再活性化 / 神経科学 / 電気生理 |
研究概要 |
1.実験パラダイムの確立とデータの収集 徐波睡眠中、嗅皮質の鋭波に伴って起こる嗅皮質ニューロンの再活性化現象の様式と機能について調べることが本研究の目的である。今年度はラット/マウスに摂食行動もしくは摂食拒否行動を効率的にとらせる学習系の確立を行った。ラット/マウスに特定の匂いと砂糖(報酬)、もしくは嫌悪(もしくは無報酬)を学習させた。フィールド上に報酬もしくは嫌悪と結びついた匂いを付けた砂糖入り皿を提示し、動物が皿を見つけて近づき、報酬と結びついている匂いなら摂食行動を、嫌悪(無報酬)と結びついている匂いなら摂食拒否行動を取るように学習させた。学習成立後、ラット/マウスの嗅皮質に多数のテトロード電極を留置し、これを動かすためのマイクロドライブを頭蓋骨に取り付け、睡眠覚醒を判断するために後頭葉にビス電極を留置した。呼吸リズムをモニターするために、鼻腔内にサーミスタ(温度計)を留置した。これらの手術後、ラット/マウスに行動前睡眠→摂食/摂食拒否行動→行動後睡眠という一連の行動を取らせ、この期間中それぞれの電極等からのシグナルを継続的に記録した。摂食/摂食拒否行動中の嗅皮質からの記録を解析した結果、摂食行動中に特異的に応答するニューロン群が存在することを新たに発見した。 2.嗅皮質鋭波と他の脳領域との相互作用 嗅皮質鋭波の機能を解明するために、徐波睡眠中、他の脳領域との鋭波を介した相互作用があるかどうか調べた。嗅皮質と眼窩前頭皮質に多数のテトロードを埋め込み、徐波睡眠中の相互作用を調べた。その結果、嗅皮質鋭波は眼窩前頭皮質の脳波がdownからup stateになるタイミングに合わせて起こりやすいこと、眼窩前頭皮質の一部のニューロンが嗅皮質鋭波に同期して発火することなどが分かり、徐波睡眠中、嗅皮質と眼窩前頭皮質の間でダイナミックな相互作用が行われていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嗅皮質鋭波中に起こる再活性化の意義を知るためには、鋭波中に再発火するニューロンが覚醒時にどのような応答パターンを示したか重要である。本年度で摂食行動特異的に応答する嗅皮質ニューロンを発見したことで、今後、これらのニューロンの行動後徐波睡眠時の再活性化様式を調べることで嗅皮質鋭波の機能意義に迫れると期待される。また、徐波睡眠中、嗅皮質と眼窩前頭皮質の相互作用についての理解が深まった。このことは、嗅皮質鋭波の機能が単に嗅皮質内での再活性化の場というだけでなく、他の脳領域との相互作用の場になっていることを示唆しており、今後、嗅皮質鋭波の機能的意義により迫っていけると期待される。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
確立した行動の系を用いて、次の6点を主に検証する。(1)摂食行動時に特異的に応答した細胞群が行動後の徐波睡眠時に再活性化するかどうか、またその様式を行動前徐波睡眠時と比較して解析する。(2)同じセッション中で異なる匂いを用いて摂食行動を行わせる。異なる匂いに応答する嗅皮質の細胞群がその後の徐波睡眠中にどのような様式で再活性化するのかを検討する。(3)摂食拒否行動時に特異的に応答する細胞が存在するかどうかを検討する。また、見つかった場合は行動後徐波睡眠時の再活性化とその様式について検討する。(4)同一セッション内で起こる、摂食行動、摂食拒否行動のそれぞれに応答するニューロン群がどのような様式で行動後徐波睡眠時に再活性化するのか検討する。(5)行動後睡眠時に嗅皮質の活動を抑制することで、行動後睡眠時の嗅皮質での再活性化現象が記憶の固定化に関与しているかどうかを検討する。(6)徐波睡眠中の嗅皮質と眼窩前頭皮質との相互作用についてさらに詳しく解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ解析用ソフトウエア等の導入を予定していたが、本年度は予定していたデータ解析よりも実験系の確立、データの収集を優先させたほうが本研究の遂行にとって有益であると判断したため、ソフトウエア等の購入を来年度に変更したため次年度使用額が生じた。 データの収集が順調に進んだので、次年度に当該助成金を用いてデータ解析用ソフトウエア等を購入し、データ解析を進める。翌年度分の助成金は当初の計画通りに使用する予定である。
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