嗅皮質の機能に迫るため、主に徐波睡眠中に起こる鋭波に着目し研究を進め、以下の結果を得た。 1.嗅皮質鋭波と前頭眼窩皮質との相互作用 徐波睡眠中、嗅皮質鋭波を介して嗅皮質と前頭眼窩皮質が相互作用をしているという仮説のもと、徐波睡眠中のラット前梨状皮質と前頭眼窩皮質から同時に多数のニューロン発火活動と局所脳波を測定した。その結果、(1)徐波睡眠中、前頭眼窩皮質は細胞が積極的に発火するup stateとサイレントになるdown stateを交互に繰り返した。この時、局所脳波は徐波となった。前梨状皮質もまた徐波が見られ、up-down stateの出現タイミングが前頭眼窩皮質と大まかに一致することが分かった。(2)前頭眼窩皮質のup-down stateの切り替わりのタイミングと前梨状皮質の鋭波出現のタイミングが一致する傾向があった。(3)前頭眼窩皮質のup-down stateのタイミングに一致した発火活動を示す前梨状皮質ニューロンが見つかった。また、前梨状皮質の鋭波に伴って発火する前頭眼窩皮質のニューロンも見つかった。これらの結果から、徐波睡眠中、嗅皮質と前頭眼窩皮質の間で積極的な相互作用があることが示唆された。 2.匂いを手掛かりとした摂食行動に伴って発火する細胞と再活性化 鋭波の機能を知るためには、鋭波でコードされている情報を抽出できるかどうかが大事であり、そのためには、嗅皮質がどのような入力に対して応答するのかを知る必要がある。匂いを手掛かりとした摂食行動/摂食拒否行動中のラット/マウス嗅結節亜領域から記録を取ると、摂食行動に関連して応答を増加させるもしくは減少させるニューロン群が見つかってきた。さらに、嗅結節の吻側にあるTenia tectaにおいても同様のニューロンが見つかってきた。また、これらニューロンの一部は摂食行動後の休息時に再活性化されることもわかってきた。
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