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2013 年度 実施状況報告書

シナプスの選択的強化・除去を制御する神経活動とその分子基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25830004
研究種目

若手研究(B)

研究機関東京大学

研究代表者

上阪 直史  東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70597624)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードシナプス刈り込み / プルキンエ細胞 / 登上線維 / 逆行性シグナル / 神経活動
研究概要

人を含む動物の神経回路は、各個体の経験や置かれた環境により再編成されることが知られている。その細胞レベルでの変化として、神経活動に依存したシナプス結合の強化あるいは除去(シナプス刈り込み)がある。本研究では、神経活動がシナプス刈り込みを制御する原理を分子のレベルで理解することを目指している。この目的を達成するため、シナプス刈り込みのメカニズム解明に有用なモデル系である小脳の登上線維―プルキンエ細胞シナプスを用いた。本年度は、ポストシナプス細胞であるプルキンエ細胞の神経活動ならびに分子の活動が登上線維―プルキンエ細胞シナプスを強化・除去する過程の分子基盤を明らかにすることを目指した。
多くの遺伝子をスクリーニングするために、以前開発した登上線維の起始細胞がある下オリーブ核と小脳の共培養系を用いた。この系とレンチウィルスによるRNA干渉ノックダウン法を組み合わせ、ポストシナプス細胞であるプルキンエ細胞で発現する遺伝子の機能を解析した。本年度は、約50種類の遺伝子に関して、シナプス刈り込みへの関与を解析した。その結果、最初期遺伝であるactivity-regulated cytoskeleton-associated protein (Arc)、Semaphorin3A、Semaphorin7Aをノックダウンした時にシナプス刈り込みの異常が見られた。さらに、Arcの神経活動依存性を調べた結果、Arcの発現はプルキンエ細胞の神経活動に依存して増加することが見出された。このArcの発現増加は、P/Q タイプ電位依存性カルシウムチャネル (P/Q VDCC)の阻害剤の存在下では見られなかった。これらのことから神経活動によりP/Q VDCCが活性化し、活性化したP/Q VDCCを通り細胞内に入ってきたカルシウムによりArcの転写が活性化され、Arcの発現が増加する可能性が考えられる。その増加したArcが不要な登上線維シナプスを除去し、成熟した登上線維―プルキンエ細胞シナプスの回路が完成することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

今年度、シナプス刈り込みに関わる遺伝子を3個同定した。この結果は、これまでのノックアウトマウスを用いた研究と比較して、非常に効率良く関与する分子を同定できていることを意味している。さらに、同定した分子とこれまで関与が知られていた分子との関係も明らかにできている。これらのことから、予想されるより大幅に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今年度までに、3つの遺伝子がシナプス刈り込みに関わることが示唆された。今後は、この3つの遺伝子に関してシナプス刈り込みに関わるメカニズムを深く追求する。具体的には、それらの遺伝子の神経活動依存性やその上流、下流のシグナリングを明らかにする。さらに、まだまだ多くの遺伝子が関与するため、引き続きシナプス刈り込みに関わる遺伝子をスクリーニングする。

次年度の研究費の使用計画

本研究では、プルキンエ細胞だけでなく、プルキンエ細胞を取り囲むバーグマングリア細胞にある分子がシナプス刈り込みに関わるかを明らかにする計画である。そのために、バーグマングリアで発現する遺伝子をプロファイリングする必要がある。このプロファイリングには、バーグマングリアで選択的にEGFPが発現するマウスが必要だが、今年度マウスの取得が大幅に遅延した。そのため、この実験計画を次年度に行わざるを得なくなった。そのため、この実験計画に使用予定であった額を次年度に持ちこすこととなった。
バーグマングリアでEGFPを発現するマウスからセルソーターでEGFP陽性細胞のみを取得し、そこからRNAを抽出し、バーグマングリアで発現する遺伝子をプロファイリングする。このプロフィリングした遺伝子がシナプス刈り込みに果たす役割を解析する。このために必要な物品・消耗品費として持ち越した額を使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Arc/Arg3.1 is a postsynaptic mediator of activity-dependent synapse elimination in the developing cerebellum2013

    • 著者名/発表者名
      Mikuni T, Uesaka N, Okuno H, Hirai H, Deisseroth K, Bito H, Kano M
    • 雑誌名

      Neuron

      巻: 78(6): ページ: 1024-35

    • DOI

      10.1016/j.neuron.2013.04.036

    • 査読あり
  • [学会発表] Retrograde signaling regulates synapse elimination in developing brain2014

    • 著者名/発表者名
      Uesaka Naofumi, Uchigashima Motokazu, Mikuni Takayasu, Hirai Hirokazu, Watanabe Masahiko, Kano Masanobu
    • 学会等名
      第91回日本生理学会
    • 発表場所
      鹿児島、日本
    • 年月日
      20140316-20140316
    • 招待講演
  • [学会発表] Identification of retrograde signaling molecules required for developmental synapse elimination in the cerebellum by an RNAi-based approach2013

    • 著者名/発表者名
      Naofumi Uesaka, Takayasu Mikuni, Hirokazu Hirai, Masanobu Kano
    • 学会等名
      Neuroscience 2013
    • 発表場所
      San Diego, CA, USA
    • 年月日
      20131111-20131111
  • [学会発表] Functional screening of molecules required for developmental synapse elimination in the cerebellum by RNAi-based approach2013

    • 著者名/発表者名
      Naofumi Uesaka, Takayasu Mikuni, Hirokazu Hirai, Masanobu Kano
    • 学会等名
      Gordon Research Conference on the Cerebellum
    • 発表場所
      Colby-Sawyer College New London, NH, USA
    • 年月日
      20130813-20130815
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://plaza.umin.ac.jp/~neurophy/Kano_Lab_j/Top_j.html

  • [備考] 上阪直史researchmap

    • URL

      http://researchmap.jp/keichan3sai/

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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