研究課題/領域番号 |
25830011
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤島 和人 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (20525852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 樹状突起 / 形態形成 |
研究概要 |
本研究は小脳プルキンエ細胞をモデルとし、樹状突起が三次元的な空間パターンを形成する仕組みを明らかにすることを目的とする。ニューロンの樹状突起は伸長、分岐、退縮を含む固有の成長ダイナミクスにより発達する。ダイナミクスが周囲の環境によって修飾されることで、ニューロンは特異的な樹状突起を形成する。今年度は樹状突起ダイナミクスの制御機構について以下の研究を行った。 (1)樹状突起の退縮・維持に関与する分子の探索および機能解析を行った。RNA干渉法や薬剤を用いて関連分子の探索を行う一方、先行研究により関与が明らかになっている接触認識分子 (プロトカドヘリン)にも特に注目し、ノックアウト動物を手に入れて機能解析を行った。培養下における当該分子のノックアウト細胞では突起同士の接触(クロスオーバー)が増えているといった異常が見られた。当該分子の下流に存在すると予想されるFAKに機能阻害実験も始めている。 (2)ミトコンドリアの樹状突起への輸送を阻害することで、ミトコンドリアが突起の安定な伸長に重要であることを見出した。また樹状突起成長期における細胞内のATP濃度を計測し、ミトコンドリアの輸送が樹状突起局所のATP生産に重要であることを明らかにした。 (3)またニューロンは三次元組織の中で、周囲の物理的構造に影響を受けて形態形成を行うと考えられる。しかし生体内において組織の構造を人工的に操作し、そこに成長する突起形態への影響を解析するのは非常に難しい。そのため人工的に配列したナノ繊維上で細胞培養を行うことで、小脳の組織構造を模した培養系を開発した。ランダムに配向した繊維上で樹状突起は特徴的な方向性は示さないが、平行に配列した繊維上ではそれに対して直交方向に樹状突起を形成する。この単純化された実験系を用い、比較的容易に組織構造に依存した突起形成過程の観察が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状突起の退縮・維持に関与する分子シグナルの候補を複数同定し、解析を始めている。退縮に伴うと予想したエンドサイトーシスの制御機構に関しては、関連性が確認できなかったが、新たにFAKの関予が示唆される結果を得ている。接触からPKC/PKDに至るシグナルカスケードの一端を明らかにできる可能性がある。 樹状突起の安定な伸長の維持に必要なミトコンドリアによるATP供給機構に関しては、予想外に進展し、論文を準備中である。 三次元組織内での突起動態の制御機構を明らかにするために行った人工ナノファイバー上での細胞培養にも成功している。この系を用いることでプルキンエ細胞樹状突起の成長方向が平行線維の配列に影響を受けることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
接触認識分子ノックアウト細胞の樹状突起成長ダイナミクスを引き続き解析する。特にタイムラプスイメージングを行うことで、隣接する樹状突起との接触時のダイナミクスの変化に注目する。当該分子の下流シグナルとしてFAKが知られている。またFAKはこれまでに退縮を制御することを示しているPKC/PKDの活性に関与することから特に注目している。FAK阻害時の樹状突起動態を明らかにするとともに、より明確なシグナルカスケードの同定を目指す。 樹状突起の三次元空間における平面性を制御する分子の探索を阻害剤、RNA干渉法などを用いて行う。人工ファイバー上で成長する樹状突起をタイムラプスで観察し、突起動態を解析することで、周囲構造が成長ダイナミクスに与える影響を精査する。 また細胞内メカニズムを明らかにするために、ファイバー上で成長する突起にかかる物理的な力と、突起内の細胞骨格のトポロジーに注目する。STORMを用いることで精細な細胞骨格構造を観察することを予定している。
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