研究課題/領域番号 |
25830020
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
浅川 和秀 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教 (30515664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ロコーモーション / 後脳 / 触覚刺激 / GCaMP / 逃避行動 / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
本研究は、ゼブラフィッシュ稚魚の逃避行動をモデルに用いて、外部環境から与えられる感覚刺激の位置に応じて、個体移動の方向性(ロコモーションの方向性)が変化する神経メカニズムを明らかにすることを目標にしている。H25年度にカルシウムイメージングによって触覚刺激によって駆動される後脳神経細胞を同定したが、H26年度は、この実験をさらに重点的に実施し、後脳のmafB陽性領域を包括的にスキャンできる実験条件を整えた。その結果、H25年度に同定した頭部への触覚刺激によって駆動される内外側領域の細胞(mediolateral cell)に加えて、mafB陽性の後脳内側領域に、頭部と尾部のいずれの触覚刺激によっても駆動される細胞群が、前後軸にそって整列していることが分かった(medial cell)。medial cellは、mediolateral cellより遅れて活性化され、長い持続的な活動(5秒以上)を示した。このことから、medial cellは逃避行動における泳ぎ運動に相関する神経活動パターンを示すことが予想された。mafB陽性領域の内側に存在するグリシン作動性ニューロンをカルシウムイメージングによって観察したところ、medial cellと同様な活動パターンを示したことから、medial cellはグリシン作動性の抑制性ニューロンを含むことが分かった。mediolateral cellとmedial cellは、逃避行動のトリガーニューロンの一つであるMauthner細胞をアブレーションによって阻害しても、その活性化に影響がほとんど見られないことから、Mauthner細胞とは独立に逃避行動に関与しうると予想された。今後、mediolateral cellとmedial cellが担う逃避行動における役割を明らかにすることが必要であるが、この実験に必要なアブレーション実験、光遺伝学実験のセットアップに取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
後脳のmafB陽性領域は、後脳の分節構造であるロンボメア5と6のほぼ全体を含むが、この領域において触覚刺激によって駆動されるの神経活動を再現性よく検出できるようになっている。また、同定された細胞群の機能操作(2光子レーザーによるアブレーションや、光遺伝学)の準備に取りかかる段階に達している。
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今後の研究の推進方策 |
2光子レーザーによるアブレーションは、対象となるmediolateral cellが比較的散在しているので、アブレーションの条件検討を十分行い、ゼブラフィッシュ稚魚にあたえる非特異的なダメージを最小限に留めるプロトコルを確立する。光遺伝学による神経機能抑制に用いる、ハロロドプシン系統は既に樹立されているため、アンドール社MOSAICシステムによる、mediolateral cellの機能阻害実験を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
光遺伝学による神経機能操作実験に必要な、LED光源及び、実験装置の購入に費用を充当する予定だったが、共通機器により該当実験に使用可能な機器が購入されたため、執行を見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
神経機能操作を行なった個体の行動解析を行なうための実体顕微鏡と、刺激装置の購入や作製に充当する。
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