研究課題
若手研究(B)
動物実験で男性ステロイドを女性ステロイドに変換する酵素であるaromataseが攻撃性に関連することが示唆されているが、ヒト生体内のaromataseと攻撃性が研究された例はない。我々は、aromataseを生体内で観察できるPETプローブ11C-cetrozoleを独自に開発し、健常ヒトのaromataseとヒトの感情や気質・性格の関連性を探索する研究を遂行している。これまでの研究で、ヒトの脳内aromatase発現量と攻撃性に相関があることを示していたが、今回はそれに加えて脳内aromatase発現量と、個人の気質・性格(質問紙によって測定)との相関をはかった。その結果、損害回避や協調性などにおいても、脳内aromataseレベルと相関があることがわかった。またその相関には性差があり、男女間で異なった調節機構が存在する可能性が示唆された。Aromataseによって産生された女性ステロイドが作用するためにはestrogen受容体に結合しなくてはならない。すなわちestrogen受容体の分布・制御もまた精査されるべきであり、そのためのestrogen受容体の新規PETプローブの開発は現在遂行中である。2種類の候補化合物の合成に成功し、現在そのPETプローブとしての有用性を測定中である。さらに他の類縁体の合成も試みている。攻撃性を伴う精神疾患患者のリクルートは行っているが、現在のところPET試験を行うまでにはいたっていない。今後さらに患者探索の範囲を広げる。自閉症行動と脳内aromatase発現の関連性には現在未着手である。今後、実験を遂行する予定である。
2: おおむね順調に進展している
精神疾患患者のPET試験は実現していないが、健常成人の攻撃性以外の気質・性格についてのデータの取得・解析は順調に進んでおり、現在論文執筆中である。Estrogen受容体可視化新規PETプローブの開発についても、合成が進んでおり、現在評価中である。自閉症行動と脳内aromataseの関連性の検討については、準備が順調に進んでいる。
攻撃性を伴う精神疾患患者のリクルートは難航しているが、現在国外の研究機関とも相談をしてPET試験実現の可能性を探っている。Estrogen受容体可視化新規PETプローブの開発についてはこのまま複数の候補化合物を合成・評価を続けていく。自閉症行動と脳内aromatase発現量の関連についての研究は、ヒトへの応用も考慮にいれてすすめていきたい。
攻撃性を伴う精神疾患患者のPET試験を予定していたが、患者のリクルートに難航しておりPET試験が行われなかった。そのためそれに係る費用(主に謝金)を繰り越すこととなった。引き続き患者のリクルートは行っており、PET試験を目指しているので、その費用としたい。
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Journal of Nuclear Medicine
巻: 55 ページ: 852-857
10.2967/jnumed.113.131474