研究課題/領域番号 |
25830024
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高橋 佳代 独立行政法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (90462697)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | aromatase / human / PET / aggression / cooperativeness / estrogen |
研究実績の概要 |
ヒトにおける脳内aromatase発現量と性格・気質の関連性について明らかにした。まず脳内aromatase分布パターンに性差はなかったが、aromatase発現量は、視床、扁桃体、視床下部において男性の方が女性より高い傾向にあった。これはラットやサルでの結果と一致しており、血中estrogen量が低い男性において脳でのestrogen生合成が重要であることが示唆される。また、質問紙を用いて個人の攻撃性や気質・性格を測定したところ、女性の視床においてaromatase発現量と攻撃性(発現高→攻撃性高)および協調性(発現高→協調性低)に相関が見られた。また男性の場合は視床下部のaromatase発現量と協調性に相関がみられた(発現高→協調性低)。このことはaromataseおよびそれによって産生されるestrogenと個人の性格・気質に関連があり、またそのメカニズムには性差があることを示唆している。 さらにestrogen濃度あるいはestrogen受容体濃度をヒト生体内で定量するためにPET核種で標識されたPETプローブの開発が進められている。2種類合成に成功しているが、脂溶性が高いため、生体への投与の条件を検討中である。また自閉症モデルマウスについては、行動様式に個体差が多くデータの取扱いが難しいという情報を得たため、実験計画を一部変更し、ヒトでの試験を目指して新たなPETプローブの開発に着手している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常成人でのPET試験は順調に進んだが、精神疾患患者のリクルートは難航している。Estrogen受容体可視化新規PETプローブは、化合物自体の合成は成功しているが、ヒトでの投与条件について検討を重ねている。 自閉症についてはモデルマウスの行動様式の個体差でデータの取扱いが難しいという情報を得たため、ヒトで臨床試験を行うための準備をすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
攻撃性を伴う精神疾患患者のリクルートについてはオーストラリアの研究機関と共同研究の可能性について議論している。 Estrogen受容体可視化新規PETプローブおよび自閉症に関わるその他の新規PETプローブの合成、評価、ヒト臨床試験にむけての安全性試験を行っていく。 自閉症のヒト臨床PETの準備をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
攻撃性を伴う精神疾患患者のPET試験を予定していたが、患者のリクルートに難航しておりPET試験が行われなかった。国際学会に複数参加したためその旅費に一部回したが、残った分は来年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
新規PETプローブの有用性、安全性を確かめるための実験に使用する。
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