これまでに光ピンセット法を用いて、酵母プリオンタンパク質Sup35NM一分子のコンフォメーションスペースを解析してきた。その結果、野生型Sup35NMは、3つか4つのコンパクトな構造を取ることが解った。また、弱いアミロイド性を示す17番目のセリンをアルギニンに変えたS17R変異体は、強いアミロイド性を示す野生型とは異なるコンフォメーションスペースを持つことが解った。さらに、S17R変異体に139番目から142番目のリジンをグルタミン酸に変えた変異体 S17R+EPEEは、野生型に近いコンフォメーションスペースを取ることが解った。また、野生型および変異体のアミロイドを作製し、酵母へと感染させ、その感染率を酵母の表現型を用いて測定したところ、S17R+EPEE変異体のアミロイドはS17Rのみの変異体のアミロイドと比較して、アミロイドの感染率が高い(より強いアミロイド性を示す)ことが解った。さらに、アミロイドをプロテアーゼ K で切断した後、質量分析装置を用いてアミロイドのコア領域を測定したところ、S17R+EPEEアミロイドのコア領域は、S17Rのみの変異体アミロイドのコア領域とは異なり、野生型Sup35NNアミロイドのコア領域と同様の領域で見られた。これらのことから、S17R変異体は139番目付近のリジンと反発するため、野生型とは異なるコンフォメーションスペースを取ることが示唆される。
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