研究課題/領域番号 |
25830032
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 航志 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10631913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 成体神経新生 / 嗅球 / 嗅皮質 / 嗅覚学習 / 神経科学 |
研究概要 |
嗅覚一次中枢である嗅球には、哺乳類であっても生後もニューロンが新たに生まれ既存の神経回路に組み込まれる。嗅球新生ニューロンは嗅覚記憶の形成に関わると考えられている。申請者らのこれまでの研究により、嗅球新生ニューロンの既存の嗅球神経回路への組み込みは嗅覚皮質からの遠心性入力によって制御されることが示唆された。嗅覚皮質から嗅球新生ニューロンへの投射様式はまだ明らかになっておらず、本研究課題ではこれを明らかにする。 平成25年度度においては、嗅球新生ニューロンへシナプス入力をもつ神経細胞群を網羅的に標識するトレーサーの導入開発を目指した。近年報告された改変型狂犬病ウィルスを用いた逆行性経シナプストレースのシステムは、脳内の特定の神経細胞群への入力様式を明らかにできる点で優れており、本研究でもこのシステムを導入した。このシステムでは2つのウィルスベクターを用いる。1つは改変型狂犬病ウィルスで、野生型のウィルスからenvelopが哺乳類細胞には感染しないEnvAへと偽型され、ゲノムから経シナプス感染に必要なG遺伝子が欠損され代わりに蛍光タンパク質遺伝子が挿入されている。もう1つは標的としたい神経細胞種、すなわち嗅球新生ニューロンにEnvAへの受容体であるTVAとG遺伝子を発現させる補助ベクターである。本研究では、TVAとG遺伝子の発現誘導にレンチウィルスベクターを選定した。これまでに、改変型狂犬病ウィルスおよびレンチウィルスのどちらも作製し、嗅球新生ニューロンにシナプス入力を与える嗅覚皮質の神経細胞群を蛍光タンパク質で標識できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入した逆行性経シナプストレースシステムを用いて、嗅球新生ニューロンへの嗅覚皮質からの遠心性入力を可視化したところ、ある嗅球局所の新生ニューロンへ入力を与える嗅覚皮質の神経細胞群は嗅覚皮質内で一様に分布するのではなく、特定の亜領域に偏りをもつ可能性が見いだされた。現状では必ずしも標識の効率が一定ではなく、個体によって標識効率が悪いものが生じており、レンチウィルスベクターのプロモータの再検討および作り直しを行うことで改善を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
レンチウィルスベクターの再開発を行い、逆行性経シナプストレースの効率を安定させる。また平成26年度では、嗅覚記憶と嗅球新生ニューロンへの遠心性入力の関連を見いだすための行動実験をあわせて行う。摂食行動や天敵臭への暴露などの嗅覚経験をしたマウスで逆行性経シナプストレースすることによって、嗅球新生ニューロンに入力を与える嗅覚皮質の神経細胞集団が嗅覚経験依存的に変化するかどうかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
重点的に予算計上していた脳組織標本画像処理ソフトNeurolucidaの導入を平成26年度に持ち越したため。 Neurolucidaの導入に当てる。
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