大脳皮質を構成するニューロンは、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの2種類に分類される。抑制性ニューロンは大脳皮質内の局所回路において、周囲のニューロンを抑制することで、皮質の活動を適切に調節している。抑制性ニューロンは形態学的、分子生物学的、電気生理学的特徴から大きく3つのグループに分けられ、そのうち最も大きな割合を占めるのが、パルブアルブミン陽性インターニューロンである。近年では、認知、情報の統合といった、高次脳機能発現のメカニズムとして注目を集めているガンマ振動の生成にパルブアルブミン陽性ニューロンが必須であること、また、統合失調症など精神神経疾患においてパルブアルブミン陽性ニューロンの異常がみられることなどから、パルブアルブミン陽性インターニューロンが形成している局所神経回路の詳細の解明が待ち望まれるところである。 そこで、本研究ではパルブアルブミン陽性ニューロンの作動原理解明を目指し、パルブアルブミン陽性ニューロンがどの興奮性ニューロンから強く入力を受けているかを明らかにした。方法は、パルブアルブミン陽性ニューロンの細胞体・樹状突起がGFP標識されている遺伝子改変マウスから新鮮脳スライスを作製し、皮質運動野の興奮性ニューロンに対して細胞内染色を行う。当初、梨状様皮質で行う予定であったが技術上の問題により、運動野に変更した。各層の興奮性ニューロンの軸索からパルブアルブミン陽性ニューロンの細胞体・樹状突起に対してどのように入力するのか比較解析した。第2層ー第5層の興奮性ニューロン由来の全ブトンのうち約14%がパルブアルブミンに入力したのに対し、第6層では約25%と、有為に高い割合で入力しており、特異的な神経回路の一端を明らかにできた。 本研究で得られた研究成果は、2013年8月の神経科学学会、2015年10月の解剖学会九州支部学術集会で発表し、現在は論文投稿準備中である。
|