研究課題
ペリニューロナルネットは、一部のニューロンの細胞体周囲を覆う特殊化した細胞外マトリックスである。1980年代に、ペリニューロナルネットが海馬や大脳皮質のカルシウム結合タンパクであるパルブアルブミンを発現しているGABAニューロンに形成されていることが示されたが、その機能的意義については長く不明であった。しかし、2000年代になり、発達期の視覚野における眼優位性可塑性をペリニューロナルネットが制限していることが報告されて以来、多くの分子レベルと個体レベルの研究が行われている。一方で、神経回路レベルの研究は少なく、ペリニューロナルネットが形成されているニューロンの同定は進んでいない。このため我々は、ステレオロジー解析などの形態学的手法を用いて、海馬神経回路におけるペリニューロナルネットの存在様式の研究と発現制御機構の解明に取り組んだ。その結果、WFAレクチンで標識される海馬のペリニューロナルネットは、basket型PV陽性ニューロンには形成されるが、axo-axonic型PV陽性ニューロンには形成されないことを報告した。また、他のサブクラスのパルブアルブミン陽性ニューロンやニューロン型一酸化窒素合成酵素 (nNOS) 陽性ニューロンの一部にも、多様な分子組成のペリニューロナルネットが形成されていることを見出した。さらに、海馬のペリニューロナルネットは、加齢に伴って変動することを見出した。本研究の結果は、ペリニューロナルネットによる神経回路制御機構を解明する上で重要な基礎的知見である。
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European Journal of Neuroscience
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10.1111/ejn.13227