研究課題
ブニナ小体は筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)の病理学的特徴の一つである。ブニナ小体を欠くALSには、ALSとして特異な例が含まれる可能性があり、その臨床病理像を明らかにするために、当研究所に保存された145例のALSを検討した。病理診断書にブニナ小体の記載のないものは24例(約17%)であった。ブニナ小体が観察されない理由として下位運動神経系の変性が高度であると考えられる例は6例あり、1例を除き人工呼吸器に接続され、罹病期間も4年~13年(平均9年)と長かった。残りの18例の内訳は、SOD1遺伝子変異ALSと考えられる例が8例、FUS陽性構造を伴うものが2例、SQSTM1変異例1例、その他が7例であった。その他の7例はいずれも孤発例であり、上記SQSTM1変異ALSとの類似性を検討したが、同等の症例は含まれていなかった。1例では、運動神経系および淡蒼球・ルイ体・黒質にわたる多系統変性を示し、ユビキチン、TDP-43等のいずれの免疫染色によっても陽性像は認められなかった。さらに、下位運動神経系に変性が強調され、グリア胞体内のTDP-43陽性構造が目立つ例、ALSと多系統萎縮症の合併例、球麻痺型で極端に舌下神経核に変性が強い例などの特異な症例がある一方、3例はブニナ小体がないことを除けばごく典型的なALSであった。SOD1変異ALSとして、既報告のA4T、D101Y変異に加え、今回I104FおよびL126S変異例が1例ずつ見いだされた。I104F変異SOD1例の病理報告はないが、自験例では臨床的に表現促進現象の可能性があり、さらに多系統変性を呈するなどの特徴があった。また、FUS陽性構造を伴うALSの2例のうち1例は新規症例であり、神経系に広範に好塩基性封入体を認め、FUS変異例として矛盾がない。このようにブニナ小体を欠くことに注目することにより、臨床病理学的に特徴のあるALS症例を拾い上げ、検討することが出来た。SOD1変異例、FUS陽性例を含め、抽出した症例について、各々論文として報告を予定している。
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Brain Pathology
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10.1111/bpa.12262.