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2013 年度 実施状況報告書

家族性筋萎縮性側索硬化症2型疾患iPS細胞の樹立とALS2疾患モデル細胞の作出

研究課題

研究課題/領域番号 25830040
研究種目

若手研究(B)

研究機関東海大学

研究代表者

大友 麻子  東海大学, 医学部, 助教 (50535226)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード筋萎縮性側索硬化症 / 家族性筋萎縮性側索硬化症2型 / ALS / ALS2 / iPS細胞
研究概要

本研究は、日本国内で初めて同定された2名の家族性筋萎縮性側索硬化症2型(ALS2)患者からiPS細胞を樹立し、そのiPS細胞株から運動ニューロンを分化誘導することによって、ALS2疾患モデル細胞を作出すること、さらに、その細胞表現型を非患者由来運動ニューロンの細胞表現型と比較することによって、ALS2疾患モデル細胞特異的にみられる機能異常を同定することを目的とする。
ALS2は、常染色体劣性遺伝形式を示す若年発症型のALSである。重度の仮性球麻痺や痙性対麻痺などの上位運動ニューロン兆候が主体であることに比べて、筋萎縮が軽度であり、線維束性収縮の報告が少ないなど、下位運動ニューロン症候が軽微であることが特徴的である。2001年から現在までにALS2遺伝子上に独立した遺伝子変異が世界各国で同定されている。2009年に本邦でも、浜松医科大のグループによって複合ヘテロ接合体 (compound heterozygosity) のALS2遺伝子変異が、若年発症型で緩徐進行性の運動ニューロン疾患を呈する兄弟に同定された。本研究は、この本邦で同定されたALS2患者からiPS細胞を樹立し、解析を行う計画である。
本年度は、ALS2患者及びその家族の同意のもと、末梢血からリンパ球を採取し、その中のT細胞からiPS細胞株の樹立を開始した。現在までに、患者及び非患者各1名よりiPS細胞の樹立及びクローン選択が終了し、残りの患者及び非患者各1名よりiPS細胞の樹立及びクローン選択を継続して行っている。また、得られたiPS細胞株から運動ニューロンへの迅速な分化誘導系の条件設定行うと共に、ALS2疾患モデル細胞の表現型の評価系構築に着手した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究を開始する以前から、浜松医科大学、慶應義塾大学医学部生理学教室及び東海大学医学部の共同体制の整備を行ってきた。そのため、研究開始時から大きな問題を抱えることなく、患者の血液サンプルの入手及びそれらを用いたiPS細胞の樹立に着手することができた。学内外の方々の多くの協力を得て、2013年度に計画していたiPS細胞の樹立及び運動ニューロンへの分化誘導系の構築まで概ねスムーズに研究を進めることができた。

今後の研究の推進方策

現在までに、ALS2患者及び非患者各1名よりiPS細胞の樹立及びクローン選択を終了した。本年度は、残りの患者及び非患者各1名よりiPS細胞の樹立及びクローン選択を終了させる。クローン選択の終了後、ALS2患者由来疾患iPS細胞を運動ニューロンへと分化誘導し、その細胞表現型の解析に着手する。具体的には、以下の手法を用いる計画である。
①iPS細胞のクローン選択:得られたiPS細胞株を低濃度のbFGF存在下で杯様態を形成し、多分化能を評価する。分化誘導前に未分化マーカーの発現を確認でき、かつ三胚葉へと分化する能力を持つiPS細胞株を細胞表現型の評価に用いる。
②ALS2疾患モデル細胞の作出及び細胞表現型の評価:昨年度までに、iPS細胞からの運動ニューロンへの分化誘導系の実験条件の設定をほぼ完了している。ただし、この実験条件で分化誘導した運動ニューロンは、運動ニューロンマーカーの発現は高効率でみられるものの、マウスの初代培養で得られる成熟ニューロンと比較して、シナプスの形成効率が非常に低く、また形成されたシナプスも未熟である。そのため、疾患を模倣するような成熟神経細胞の機能異常や変性症状を再現するモデル細胞として用いるのは難しいと考えられる。よって、この条件で分化誘導したALS2疾患モデル細胞については、神経細胞の生存率及び酸化ストレスに対する抵抗性の2点についてを中心に評価する。さらに、これらの細胞から得たタンパク質サンプルを用いて、タンパク質分解経路に変調が生じているか否かを生化学的手法を用いて評価する。
③成熟運動ニューロン培養系の確立:iPS細胞から運動ニューロンへと運命決定の後に神経細胞の成熟を促す培養条件の確立を試みる。培地へのグリア依存的な栄養因子の添加や、アストロサイトやその他の培養細胞との共培養を試みる。

次年度の研究費の使用計画

予定していた海外及び国内旅費を他の研究費で賄うことができたため、その分の余剰が生じたため。
2014年度は疾患モデル細胞の細胞表現型の解析に着手するため、新たに使用を開始する試薬購入のための消耗品費が必要となる。そのため、前年度の持越し予算は消耗品費に用いる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] GRP78 suppresses lipid peroxidation and promotes cellular antioxidant levels in glial cells following hydrogen peroxide exposure.2014

    • 著者名/発表者名
      Kaori Suyama, Masahiko Watanabe, Kou Sakabe, Asako Otomo, Yoshinori Okada, Hayato Terayama, Takeshi Imai, Joji Mochida
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 9 ページ: e86951

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0086951

    • 査読あり
  • [図書] すべてがわかる ALS(筋萎縮性側索硬化症)・運動ニューロン疾患 アクチュアル 脳・神経疾患の臨床 担当:分担執筆、 IV.ALSの病態関連遺伝子と遺伝子変異 ALS2/Alsin2013

    • 著者名/発表者名
      大友麻子、白川健太郎、宮嶋裕明、秦野伸二
    • 総ページ数
      4
    • 出版者
      山中書店

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公開日: 2015-05-28  

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