研究課題
家族性筋萎縮性側索硬化症2型(ALS2)は、劣性遺伝形式をとる若年発症型の家族性ALSである。その疾患進行は緩徐で、上位運動ニューロン優位の傷害を伴う。ALS2は低分子量Rab5の活性化因子であり、細胞内膜動態調節機能を介してオートファジー・リソソーム経路によるタンパク分解効率の調節に関与する。よって、運動ニューロンにおけるタンパク質分解経路調節の異常がALS2疾患発症の背景にあると示唆される。しかし、ヒト運動ニューロンを用いたALS2疾患研究は未だなされていない。本研究は、本邦で初めて同定された2名のALS2患者からiPS細胞株を樹立し、そのiPS細胞株から運動ニューロンを分化誘導することによって、ALS2疾患モデル細胞を作出し、その細胞表現型を非患者由来運動ニューロンの細胞表現型と比較することによって、ALS2疾患モデル細胞特異的にみられる機能異常を同定することを目的とする。昨年に引き続き本年度は、患者1及び非患者1の末梢血よりiPS細胞の樹立を行い、それを完了した。しかし、昨年に続き、末梢血から患者由来のiPS細胞の樹立効率が非患者と比較すると非常に低くいことが判明した。そのため、現在運動ニューロン分化誘導可能なiPS細胞株の選択が難しい状況にある。患者由来の末梢血は、末梢血培養条件下での増殖能が低く、それがiPS細胞樹立の効率に影響していると考える。樹立されたクローンから運動ニューロンの分化可能なiPS細胞株の選択が難しい状況であるため、患者由来繊維芽細胞からのiPS細胞樹立も試みる計画である。昨年取得した、iPS細胞株については運動ニューロンを分化誘導し、非患者由来の運動ニューロンと異常タンパク質の蓄積について比較した。しかし、異常タンパク質の過剰蓄積は観察されなかった。培養期間や、条件を再度検討し実験の再現性について検討する計画である。
3: やや遅れている
本年度は、iPS細胞株由来の運動ニューロンの細胞表現型の評価に着手する予定であったが、患者末梢血由来のiPS細胞樹立とクローン選択が難しい状況であったため、研究を計画に沿って遂行することができなかった。昨年取得した、iPS細胞株については運動ニューロンを分化誘導し、非患者由来の運動ニューロンと異常タンパク質の蓄積について比較した。しかし、異常タンパク質の過剰蓄積は観察されなかった。こちらについては、培養期間や、条件の設定について改善点があると考える。
本年度は、iPS細胞株由来の運動ニューロンの細胞表現型の評価に着手する予定であったが、患者末梢血由来のiPS細胞樹立とクローン選択が難しい状況であったため、研究を計画に沿って遂行することができなかった。そのため、2名のうち1名の患者からは運動ニューロンの分化誘導可能なiPS細胞株の取得までには至っていない。この問題点を解決するために、患者由来繊維が細胞を用いたiPS細胞の樹立を行い、iPS細胞株を多数取得する。また、もし患者由来の細胞に問題がありiPS細胞の樹立が困難あれば、患者由来線維芽細胞にウイルスベクターを利用して運動ニューロン分化誘導に関わる転写因子群(Ascl1, Brn2, Myt1l, Lhx3, Hb9, Isl1,and Ngn2)を発現させ運動ニューロンを直接誘導する系を用いてその細胞表現型を評価する。
人件費・謝金を過剰に見積もって準備していたが、実際の雇用時間が予想よりも短縮することができたため残金が生じた。また、旅費についても他の研究費からの調達が可能であったため、減額することができた。これらの結果生じた研究費については、次年度において不足すると推定される消耗品費に充当する計画である。
これらの結果生じた研究費については、次年度において不足すると推定される消耗品費に充当する計画である。
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