多系統萎縮症(MSA)は難治性の神経変性疾患で、オリゴデンドロサイトと神経細胞にα-synucleinが蓄積して発症する。本研究では、MSAの発症機序を解析することにより、診断法および治療法の開発を目指した。これまでの研究で、オリゴデンドロサイトで特異的にヒトα-synucleinを強制発現させたMSAモデルマウスにおいて、変性したオリゴデンドロサイトから放出され、神経細胞の変性の原因となるα-synucleinの蓄積を引き起こす候補因子として、シスタチンCを同定した。平成26年度の研究では、シスタチンCが引き起こす神経細胞におけるα-synucleinの蓄積機構を解析した。まず、シスタチンCは哺乳動物細胞で発現系を構築し、分泌されたシスタチンCを培養上清から精製した。精製したシスタチンCをwild-typeマウス脳由来の初代培養細胞に投与し、生化学的解析を行った。その結果、神経細胞内のα-synuclein量が約3倍に増加し、不溶化していることを明らかにした。また、細胞生物学的解析では、シスタチンCを投与した結果、神経細胞の主に軸索でα-synucleinの蓄積が観察された。以上の結果から、オリゴデンドロサイトから放出されるシスタチンCの増加は、神経細胞のα-synuclein量を増加させ、そしてα-synucleinの不溶化と蓄積を引き起こすことにより、神経変性疾患の発症に関与する可能性が考えられた。さらに、HEK293細胞にシスタチンCを投与すると、シスタチンCが細胞内のタンパク質分解機構に影響を及ぼしていることが明らかになった。シスタチンCが影響を及ぼすタンパク質分解機構とα-synuclein蓄積との関係について解析を進めた。
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