研究課題/領域番号 |
25830048
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
安村 美里 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20533897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | IL1RAPL1 / シナプス形成 / 知的障害 / 自閉症 / 行動テストバッテリー |
研究概要 |
神経回路網の形成が適切に行われることは、脳が正常に機能するために不可欠である。神経回路網の基盤となっているのはシナプスであり、シナプス形成や再編成の破綻は精神疾患の発症に深く関与していると考えられている。原因遺伝子の機能や遺伝子産物の異常によって引き起こされる変化を細胞生物学的レベル、神経回路網レベルで明らかにすることは、疾患の病態解明の足掛かりになると考えられる。本研究はヒトでの知的障害、自閉症の原因遺伝子であり、培養神経細胞の実験から興奮性シナプスの形成分子であることが明らかとなったInterleukin-1 receptor accessory protein-like 1(IL1RAPL1)を欠損したマウスの疾患モデル動物としての有用性を評価することを目的としている。まず初めにIL1RAPL1を欠損させたことでシナプス構造に変化が生じているのかどうかを確認した。マウス脳を固定後スライスを作製し、蛍光標識試薬を用いて神経細胞を標識し樹状突起上に形成されるスパイン数を計測したところ、大脳皮質や海馬でスパイン密度が低下していることを見出した。これはin vivoにおいてもIL1RAPL1が興奮性シナプスの形成分子であることを示唆している。IL1RAPL1欠損マウスは野生型に比べ体温が若干高いが、一般的な健康状態は野生型と差が無いことが明らかになった。更に、痛覚反応や音に対する驚愕反応、プレパルスインヒビションも野生型と差がなく、IL1RAPL1の欠損は感覚機能には特に影響を与えないことが明らかになった。加速式ローターロッドテストを行ったところ、IL1RAPL1欠損マウスは運動協調が亢進していることが明らかになった。また、不安様行動や活動量を測定するテストの結果から、IL1RAPL1欠損マウスは活動量が上がっていて、広さや高さに対する不安が減少していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動解析を行うのに必要な、週令を揃えたマウスを準備するのに時間がかかってしまったため、テストを開始する時期が遅くなり、予定していたテストを全て終わらせることができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度できなかった記憶・学習に関するテスト、社会性や固執傾向といった自閉症様行動を調べるテストを行い、IL1RAPL1欠損マウスが示す表現型を確定することを予定している。また、特定の神経回路網でのIL1RAPL1の担う役割をより詳しく解析するために、部位、時期特異的にIL1RAPL1を欠損させるマウスの作成も進めていくことを予定している。
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