研究課題
昨年度に引き続き、ヒトでの知的障害や自閉症の原因遺伝子であり、興奮性シナプスのオーガナイザーであるInterleukin-1 receptor accessory protein-like 1(IL1RAPL1)欠損マウスの行動解析を行い、疾患モデルマウスとしての有用性の評価をした。本年度は、IL1RAPL1欠損マウスの記憶・学習能力と行動の柔軟性、社会性行動についての表現型を調べた。記憶・学習は、空間の参照記憶を調べるバーンズ迷路テストや作業記憶を調べる八方向放射状迷路テストとT字迷路、恐怖記憶を調べる恐怖条件付けテストを用いて評価した。その結果、IL1RAPL1欠損マウスは参照記憶や作業記憶が障害され、恐怖記憶の遠隔記憶も障害されていることが明らかとなった。したがって、IL1RAPL1欠損マウスは知的障害のモデルマウスとなると思われる。行動の柔軟性は、バーンズ迷路とT字迷路左右弁別課題の逆転学習テストを用いて評価した。バーンズ迷路の逆転学習テストでは行動の柔軟性に大きな障害は認められなかったが、T字迷路のテストではIL1RAPL1欠損マウスで固執傾向が認められた。社会性行動は、新規環境とCrawleyらのグループが開発した3チャンバーモデルを用いて評価した。その結果、IL1RAPL1欠損マウスは野生型マウスに比べ、新奇マウスとの相互作用が増えており、社会性が向上していることが明らかとなった。これらはIL1RAPL1遺伝子の変異を有する自閉症患者の症状に関連すると考えられる。本研究の結果から、IL1RAPL1欠損マウスは疾患モデルマウスとして有用であることが明らかとなった。IL1RAPL1の欠損によって引き起こされる精神神経疾患の新たな治療薬や治療法が開発された時に、それらの有効性評価を行う際にこのマウスが役立つと思われる。
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日本薬理学雑誌
巻: 145 ページ: 187-192
10.1254/fpj.145.187
Scientific Reports
巻: 4 ページ: -
10.1038/srep06613
http://researchmap.jp/3310/