研究課題/領域番号 |
25830050
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小西 博之 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90448746)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミクログリア / マクロファージ / マーカー / 神経損傷 / 神経再生 / 抗体 |
研究実績の概要 |
前年度に作成した抗体は、特殊な方法による切片の固定が必要であったため、今年度さらに有用な抗体の取得を試みた。パラホルムアルデヒド固定切片で染色可能な抗体が得られたため、その抗体を用いて舌下神経損傷モデルマウスを解析した。その結果、Siglec-Hは損傷神経細胞周囲で活性化するミクログリアに発現するが、神経切断端に集積するマクロファージには発現していないことを明確に示すことができた。さらにRT-PCR解析からmRNAレベルでも同様の結果を得た。 前年度搬入したSiglec-Hノックアウトマウスを用いて、運動神経損傷時におけるSiglec-Hの機能解析を行った。ミクログリアの数と形態は野生型マウスと同様であったが、一部のミクログリアに発現する炎症性分子について発現変動が見られたため、in vivoでもSiglec-Hがミクログリアの炎症性反応に関わる可能性が考えられた。また、Siglec-Hのリガンド探索を、前年度に作成したSiglec-H-Fcリコンビナントタンパクを用い生化学的手法で行ったが、同定はできなかった。 前述のSiglec-HノックアウトマウスはSiglec-Hの遺伝子座にジフテリア毒素受容体がノックインされているため、ジフテリア毒素の投与により、Siglec-H発現細胞のみが死に至る。ジフテリア毒素を腹腔内投与した結果、脳内からミクログリアのみが除去された。それに対し、マクロファージには効果がなかった。よって、Siglec-H遺伝子座はミクログリア特異的な遺伝子改変に有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行には、免疫組織化学に使用できる抗体の取得が必須である。今年度は、前年度作成したラットモノクローナル抗体に加え、より有用なヒツジポリクローナル抗体を得た。そして、その抗体を用いてSiglec-Hのミクログリア発現特異性を明らかにした。 今年度計画していたSiglec-Hノックアウトマウスの運動神経損傷モデルを用いた解析で、Siglec-Hが活性化ミクログリアの炎症性反応へ関与する可能性を示した。 計画していたSiglec-Hプロモーター-GFP-Creマウスの作成には至らなかったが、ジフテリア毒素ノックインマウスの解析から、Siglec-H遺伝子座を用いることによりミクログリア特異的な遺伝子改変が可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
運動神経損傷モデルマウスに加え、神経因性疼痛モデルを用いSiglec-Hの機能解析を行う。脊髄におけるミクログリアの数、形態や分子発現を野生型マウスとノックアウトマウスで比較する。またvon Frey試験により、痛覚の測定も行う。また、これまでに引き続き、生化学的手法によりSiglec-Hのリガンド探索を行う。 ミクログリア特異的遺伝子改変マウス作成におけるSiglec-H遺伝子座の有用性を引き続き検討する。Siglec-Hノックアウトマウス(ジフテリア毒素受容体ノックインマウス)を用い、in vivoにおける細胞除去がミクログリア特異的に起こることをさらに詳しく検討する。また、このミクログリア特異的除去の実験系は、将来的にミクログリアの機能解析に役立つことが予想されるため、最適な投与毒素量など実験系の確立を目指す。
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