研究課題/領域番号 |
25830051
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 啓介 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80631431)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DISC1 / ノックアウトマウス / 抗体 / リン酸化 / 統合失調症 / 分子機能 / 活性制御機構 |
研究概要 |
Disrupted-in-schizophrenia 1(DISC1)は現在報告されている最も有力な統合失調症脆弱性因子の1つである。私は、2011年にDISC1ノックアウト(KO)マウスが統合失調症様の表現型を示すこと、既存の抗DISC1抗体が内在性DISC1を正しく認識しておらず、これまでのDISC1に関する報告は再評価が必要であることを報告した。本研究では1. DISC1の分子機能解析、2. DISC1の活性制御機構の解析、3. DISC1コンディショナルノックアウト(CKO)マウスの開発と解析を行っている。 1. については、DISC1が何らかの分泌蛋白質の制御を行っていると考え、DISC1結合蛋白質のうち、蛋白質分泌に関与する分子の同定を試みた。しかしながら、有力な候補結合分子を得ることが出来なかった。そこで、分泌された蛋白質によって、遺伝子発現が変化すると考え、マイクロアレイを用いた解析を行った。その結果、いくつかの精神疾患に重要な分泌蛋白質について、DISC1ノックアウトマウスにおける発現低下が認められた。 2. については、DISC1がリン酸化によって制御されている可能性について、解析を行った。まずは脱リン酸化酵素阻害剤であるcalyculin Aを培養神経細胞に投与すると、既知のDISC1結合蛋白質とDISC1との結合が低下すること、およびバンドシフトすることを見出した。リン酸化酵素Xの阻害剤を用いた際に、DISC1のバンドシフトが消失することを見出した。よって、DISC1はリン酸化されていると考えられた。最後に、DISC1のリン酸化部位の同定を行った。 3. DISC1 CKOマウスについては、当初は平成24年度中に作製が終了する予定であったが、難航しており、現在も作製中である。現在1ライン目のキメラマウスが作製出来ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. DISC1の分子機能解析については、おおむね順調に進展している。結合蛋白質の同定と解析については、計画通りの結果は得られていないが、遺伝子発現解析に方針変更を適切に行った結果、順調に進めることが出来た。 2. DISC1の活性制御機構の解析については、リン酸化条件の検討、リン酸化部位の同定ともに順調に進捗している。今後はリン酸化酵素を作製・評価するとともに、リン酸化の意義について解析を行っていく。 3. DISC1コンディショナルノックアウトマウスの開発と解析については、やや遅れている。しかし、キメラマウスについては、1ライン作製できており、今後評価と解析を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
1.DISC1の分子機能解析については、当初の研究計画では、DISC1のTrans-Golgi network(TGN)での機能を生化学・細胞生物学的手法で解析する予定であったが、新たにDISC1ノックアウトマウスにおける、オキシトシン、バソプレシンの発現低下を見出したことから、計画を変更し、これらの分泌蛋白質の発現低下について、低下しているメカニズムおよび、発現低下の影響について、解析を行う。 2.DISC1の活性制御機構の解析については、DISC1の活性制御に関与する上流シグナルの探索とDISC1リン酸化による機能変化の解析を行う計画であった。本研究については、順調に推進されており、このまま続行する。 3.DISC1コンディショナルノックアウトマウスの開発と解析については、作製が遅れており、早急に作製・評価を行う。ただ、これまでに我々はDISC1ノックアウトマウスの作製に世界で唯一成功しており、これまでのところ、我々よりDISC1変異マウスの開発について先行している研究室は存在しない。アドバンテージが維持できるよう早急にコンディショナルノックアウトマウスの作製を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたDISC1 CKOマウスの作製・飼育・解析が遅れており、使用計画とくらべ、実験動物にかかわる費用および、実験動物から作製した初代培養細胞の細胞培養にかかわる消耗品の費用が減ったため、次年度使用額が生じた。 DISC1 CKOマウスの作製・飼育・解析は平成26年度に重点的に行う予定であり、次年度使用額はそのために使用する。
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