研究課題
若手研究(B)
(ヘスペリジンよってOPCが増殖することを確認)マウス胎児脳よりOPCを採取し、ヘスペリジンを添加してvitroの系で増殖をBrdUの取り込みなどから調べたところ、OPCの増殖が確認できた。さらに細胞周期を動かすタンパク質の発現や、Rbタンパクのリン酸化をウェスタンブロッテイングで調べたところ、一部のタンパク質に変化がみられた。(細胞内に取り込まれたヘスペリジンを確認→受容体を探索)ヘスペリジンのポリクローナル抗体を作製し、添加後のOPCを染色した結果細胞質が主に陽性であることがわかった。さらにその抗体を用いてウェスタンブロッティング等の生化学解析を行って、ヘスペリジン添加で増加するタンパクを切り出し、MALDI-TOFによるPMF法によって受容体(標的分子)候補を明らかにした。(増殖したOPCがDdx54陽性かどうかを確認)私たちはOPC/OLの細胞系譜で特異的に発現するDdx54がミエリン形成に重要なMBPの発現の制御を行っており、Ddx54を発現している細胞のみが実際にミエリンを形成できると考えている。そのため、Ddx54陽性の細胞がヘスペリジン添加によって増えるかどうかをvitroの系で細胞免疫染色により確認したところ、増加した細胞はDdx54陽性であることがわかった。意義・重要性:1)生薬チンピの主な有効成分であるフラボノイド配糖体ヘスペリジンには、脳を守る機能をもつ髄鞘(ミエリン)を作る細胞の前駆細胞であるOPCを増やす効果があることを明らかにした。2)また増殖したOPCはミエリン形成において必須のタンパク質であるDdx54を発現していること(機能的なOPCであること)を明らかにした。3)ヘスペリジンによるOPCの増殖の分子メカニズムに関与するOPCの受容体の候補を明らかにした。これらの点が重要で意義があると思われる。
2: おおむね順調に進展している
ヘスペリジンによる脱髄回復効果の分子メカニズムの解明において、まずミエリン形成担当細胞の前駆細胞であるOPCを増やすことが重要である。ヘスペリジンのOPC増殖効果の分子メカニズムの解明が平成25年度の目標であったが、今年度の研究計画・方法と照らし合わせておおむね順調に進展していると思われる。具体的には、1)私たちが確立したOPCの採取方法(J. Neurosci. Res., 2002)を用いてOPCを採取し、vitroの系でヘスペリジンを添加してその増殖効果をBrdU法などで確認することができた。2)また、ヘスペリジンによって増殖したOPCがミエリン形成に極めて重要なタンパク質であるRNAヘリカーゼ、Ddx54陽性であること(機能的なOPCであること)を明らかにした。3)タンパク質ではないヘスペリジンに対する抗体をBSA結合方法によって作製し、この抗体を用いてウェスタンブロットなどの方法を行い、ヘスペリジン添加で増加するタンパク質を抽出し、質量分析法によってOPCのヘスペリジン受容体の候補となるタンパク質を明らかにした。1)2)3)の点で大きな進展がみられた。
まずはヘスペリジンによるOPCの増殖の分子メカニズムにタンパク質のプレニル化が重要であることと、ヘスペリジンのOPCの受容体を明らかにする。そして増殖したOPCがミエリンを巻く機能を備えているかどうか(ミエリン形成細胞に分化して本当にミエリンを形成するかどうか)を明らかにする。さらにその分化・ミエリン形成の過程においてMBP, Ddx54および昨年度の研究で示唆されたヘスペリジン受容体と推定されるシャペロンタンパクが重要な役割を果たすことを明らかにし、さらにそれぞれに関与する分子を特定しシグナル伝達の機構の解明を目指して研究を進める。(研究計画の変更点)1.ヘスペリジンとナリルチンを添加して効果を調べる前にまずヘスペリジン単独効果の分子メカニズムを解明する。2.Fynチロシンキナーゼ欠損マウスの系統維持ができなくなったためと、ヘスペリジンの受容体タンパクの候補がしぼられたため、Fynよりもヘスペリジンの受容体であると推定されるシャペロンタンパク質がMBP、Ddx54およびそれらに関係する分子とどのように相互作用するのかについて解析する。(研究を遂行する上での課題に対する対応策)昨年度の研究成果によりヘスペリジンによるOPCの増殖にプレニル化が重要であることがわかった。そのためOPC内に取り込まれたヘスペリジンがプレニル化されるかどうか調べる必要が生じたので、その解析を京都大学生存圏研究所と共同研究の中で行う予定である。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、次年度の研究費と合わせて消耗品購入に充てる予定である。実験のための試薬・器具および実験動物などの消耗品購入や、論文作成のための参考図書購入、英文校閲費用などの経費として、また成果発表のための旅費などに使用する予定である。
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J. Neurochem.
巻: 155 ページ: 265-271
10.1093/jb/mvu005
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10.1002/jnr.23162