研究課題
髄鞘(ミエリン)は脳の高次機能を支えており、脱髄(ミエリンが壊れること)はアルツハイマー病など脳の難治性疾患に関与しているがわかってきた。本研究の目的は、チンピの有効成分であるフラボノイド配糖体(ヘスペリジン/ナリルチン)がどのように脱髄を回復させるのか、その分子メカニズムを明らかすることである。マウス胎児脳由来のオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC;ミエリンを作る細胞の前駆細胞)を採取し、チンピを加えて細胞の増殖をin vitroの系で調べた結果、チンピがOPCを増やすことがわかった。同様にチンピの有効成分の一つであるヘスペリジンを添加したところ、ヘスペリジン単独でもOPCの増殖を促すことがわかった。さらにチンピおよびヘスペリジンによって増えたOPCはRNAヘリカーゼのDdx54を発現していることがわかった。そしてvitroの系でヘスペリジンによるOPCの増殖効果は、ファルネシル化の阻害薬によって抑制されること、ファルネシル化を促進すると、増殖効果も上がることが明らかになった。さらにヘスペリジンを添加することにより、OPC細胞内におけるファルネシル基転移酵素の発現が増加することがわかった。これらの結果により、チンピの有効成分の一つであるヘスペリジンにはOPCを増殖させる効果があり、その分子メカニズムにはファルネシル化が関与していることが示唆された。また増殖したOPCがDdx54陽性であったことから、分化しミエリン膜を形成できる機能を持っている可能性が示唆された。ヘスペリジンが機能的OPCを増やすことがチンピのもつ脱髄回復効果のメカニズムに含まれることが明らかになった。
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J. Neurochem.
巻: 155 ページ: 265-271
10.1093/jb/mvu005