研究課題/領域番号 |
25830057
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
河下 映里 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (80509266)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | α2アンチプラスミン / 線維素溶解系因子 / 樹状突起 / 記憶 |
研究概要 |
急速な高齢化社会を迎え、認知症患者の増大は社会的問題となっており、認知症治療薬の開発が強く望まれている。しかしながら、基盤研究となる記憶の形成機構や認知症の発症機構に関して、未だ不明な点が多く、その解明は神経科学における重要課題の一つである。繊維素溶解系因子の一つとして知られるα2アンチプラスミン(α2AP)が、空間記憶や海馬由来神経細胞の樹状突起の伸長に関与するという予備的研究結果より、本研究では、記憶の形成過程での樹状突起の可塑性におけるα2APの役割とその分子機構を解明することを目的とした。平成25年度では、海馬由来神経細胞において、外因性α2APが樹状突起の伸長及び分岐、さらにフィロポディア形成を誘導することを明らかにし、特に成熟した海馬由来神経細胞においては、α2APの樹状突起分岐に対する影響を顕著に認めた。また、α2APによる樹状突起の伸長及び分岐にp38の活性化が関与していることを明らかにした。一方、α2AP欠損マウス及び野生型マウスについて、さらに多様な記憶学習能力試験を行った結果、α2APが空間記憶だけでなく、情動記憶や運動学習にも寄与していることが明らかとなった。また、空間記憶学習のトレーニング過程において、α2APの発現が増大することを発見した。以上の結果より、α2APは樹状突起の伸長及び分岐を誘導することにより、記憶学習能力に関与している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的な目的は、①神経細胞の樹状突起発達に対するα2APの影響の解明、②α2APの作用分子の同定及び下流経路の分子機構の解明、③記憶形成における樹状突起の可塑性に対するα2APの影響の解明、の3つである。平成25年度において、α2APが海馬由来神経細胞における樹状突起の伸長及び分岐をp38 MAPKの活性化を介して誘導することを明らかにした。また、空間記憶学習のトレーニング過程において、α2APの発現が増大したことから、α2APが記憶形成過程に重要な役割を担う可能性が示唆された。現時点において、シナプス形成に重要な樹状突起のスパイン構造変化に対するα2APの影響や、α2APの作用分子については解明できていないが、平成26年度には、これらの解明と併せて、記憶形成過程や神経興奮時の樹状突起の可塑性に対するα2APの影響を解析する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、シナプス形成に重要な樹状突起のスパイン構造変化に対するα2APの影響の解明や、α2APの作用分子の同定を行う。また、記憶形成過程や神経興奮時の樹状突起の可塑性に対するα2APの影響を解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究施設にすでに在庫していた消耗実験器具や細胞培養試薬、抗体などを使用し、昨年度中にこれらを購入しなかった。また、購入する予定であった高価なELISA試薬や染色試薬を購入しなかったため、次年度使用額が生じた。 実験器具や研究試薬などの昨年度の消耗品に加えて、購入する予定であったELISA試薬や神経染色試薬を購入する。
|