研究課題/領域番号 |
25830058
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
丹羽 史尋 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (50641974)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抑制性シナプス / GABAA受容体 / IP3受容体 / 代謝型グルタミン酸受容体 |
研究概要 |
申請者は当該年度の研究において、IP3Rの上流の因子として代謝型グルタミン酸受容体の活性化がIP3受容体の活性化を介してGABAA受容体の側方拡散制御に関わっていることを明らかにした。 代謝型グルタミン酸受容体を阻害剤であるMCPGで阻害すると、IP3受容体の活性化は阻害され、GABAA受容体の側方拡散は増大し、さらにGABA作動性シナプス伝達の減弱が起きた。従来、同じグルタミン酸を伝達物質とするNMDA受容体を活性化させた場合や、神経細胞の興奮に伴い電位依存性Ca2+チャネルが開口した場合は細胞外からCa2+が流入し、脱リン酸化酵素calcineurinが活性化し、GABAA受容体の側方拡散が増大する結果、GABA作動性シナプス伝達の減弱が起こることが報告されていた。これは神経細胞の興奮に伴い、その興奮を一過的に増強するようなメカニズムだと私は考えている。 今回私が発見した現象は、同じグルタミン酸によって誘導される経路ではあるが、GABA作動性シナプス伝達を増強するような従来報告されていた経路と完全に拮抗する経路であり、反応の時間スケールも従来報告されていた経路とは異なる。細胞外からのCa2+流入は5分以内にシナプス内GABAA受容体の減少を引き起こすが、代謝型グルタミン酸受容体やIP3受容体の阻害によるシナプス内GABAA受容体の減少には1時間ほどの時間がかかる。また、細胞外からのCa2+流入によりシナプス内GABAARが減少した際に代謝型グルタミン酸受容体-IP3受容体の経路を阻害することでシナプス内GABAARの再集積が阻害されることも発見した。これらの結果からは、代謝型グルタミン酸受容体-IP3受容体の活性化がGABA作動性シナプス伝達の恒常性を維持する重要な役割を担っていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にあるように計画1の内容は完全に達成した。計画2の内容についてもリン酸化サイトの変異体作製及び、それを海馬初代培養神経細胞に導入してのGABAA受容体1分子動態の撮影はすでに終了しており、現在解析を行っており、後短期間で完了する。
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今後の研究の推進方策 |
代謝型グルタミン酸受容体の作動薬を用いて、細胞外からのCa2+流入によるGABAA受容体のシナプスからの流出が阻害できるかを調べる。これによってこれまで治療法がなかったてんかん重責発作の治療への示唆が得られる。 また、交付申請書にも書いているように、GABAA受容体と結合し、制御を行っている足場タンパク質の探索を行う。
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