本研究では、Sox17-GFPノックインノックアウトマウス(Sox17-GFPマウス)を用いてSox17の子宮における発現パターンや着床への影響について解析を行った。 Sox17-GFPマウスではメス出産時の産仔数が減少する傾向にあった。そこで、まずはその原因が胚側、母側のどちらにあるのかを検討した。その結果、排卵および受精、in vitroでの胚発生は野生型由来と差が見られなかったにも関わらず、交配後6.5dpcで着床状態を確認したところ、Sox17-GFPメスマウスでは野生型に比べて着床数が減少した。また着床前胚の免疫蛍光染色の結果、Sox17は野生型と比較してその発現に差は観察されなかった。これらのことから、Sox17-GFPマウスで産仔数が減少する原因は胚ではなく母側にあり、着床の過程で何らかの異常が生じている可能性が高いことを見いだした。さらに母側の子宮において、Sox17の発現はプロゲステロン産生時期に関わらず子宮内膜に強く発現していることを確認し、続けて胚が子宮に着床する瞬間の解析を進めている。またSox17が子宮での着床時に機能しているのかどうかをより詳細に解析するため、子宮特異的にSox17を欠損するコンディショナルノックアウトマウスの作成も進め、Sox17floxマウスをプロゲステロン受容体Creマウスと交配し、Sox17子宮特異的欠損マウスを作成した。Sox17の機能相補が予想されるSox7についても同様に欠損させるため、Sox7floxES細胞を購入し、ESインジェクションによりキメラマウスの作成を行った。 着床、妊娠の過程におけるSox17の役割の解明を目指し、着床および妊娠維持の機構を明らかにすることは、マウスでの体外受精の着床率の向上・安定が望め、また着床率の向上と安定はヒト不妊治療への応用も期待できることから、臨床的にも意義のある研究と言える。
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