研究課題
若手研究(B)
RFPとUSP7の相互作用が定常状態とUV照射によるDNA損傷ストレス下で変化するのかを免疫沈降法を用いて検討した。その結果、RFPとUSP7の相互作用は定常状態とUV照射時で変化がないことを見出した。さらに、RFPとUSP7の相互作用領域を決定するため、RFPの欠失変異体を作製し、検討した。RFPのC末端側381アミノ酸(Coiled-coilドメイン(CC)+Rfpドメイン(RD))では相互作用が可能であるが、CCのみ、あるいはRDのみでは相互作用がみられなかったことから、CCとRDにまたがった領域が必要と考えられる。DNA損傷の有無、およびRFPの発現がp53のSUMO化に与える影響を検討したところ、RFPの過剰発現によって定常状態でもp53のSUMO化が増強し、UV照射によってその効果が促進されていた。また、同条件下でUSP7をノックダウンするとSUMO化の抑制が見られたため、RFPによるp53のSUMO化にはUSP7が必要であることが示唆された。USP7のノックダウンによりRFPタンパク質の安定性が顕著に低下したことから、USP7はRFPタンパク質の安定性を制御してRFPの機能を調節していることが考えられた。さらに、RFPもしくはUSP7をノックダウンすることでUV照射時におけるp53タンパク質の安定化が阻害されることを見出した。このことから、RFPとUSP7がp53のSUMO化を介して安定性を制御している可能性が考えられた。RFPおよびUSP7ががん細胞のUV照射に対する耐久性にどのような影響をあたえるか検討した。それぞれのノックダウンにより低線量のUV照射時にがん細胞の生存率が低下することを見出した。種々のがん細胞株におけるRFPの発現については、いずれの細胞においても高発現が認められ、細胞株同士での比較が困難であった。
2: おおむね順調に進展している
相互作用の検討については、RFPとUSP間の相互作用はDNA損傷の有無に依存しないこと、RFPがC末端側においてUSP7と相互作用することが明らかに出来たものの、当初の目標である関連タンパク質群の相互作用の全容解明には至っていない。一方で、p53のSUMO化についてはRFPがDNA損傷に応じてp53のSUMO化を増強し、その作用にUSP7が必要であることを明らかにしており、一部次年度の目標を達成しつつあるものと考えている。そのため、実験計画についてはおおむね順調に進展していると判断した。RFP,USP7が、がん細胞のUV照射に対する抵抗性の増強に寄与することを明らかにしており、計画の一部目標について達成したものと考えている。ただし、がん細胞株同士でのRFPの発現比較が困難であったため、一部については未達成と判断している。上記の状況を総合的に判断し、現在までのところ本研究計画がおおむね順調に進展していると判断した。
①p53やMDM2のどのアミノ酸残基をRFPがSUMO化しているのかを質量分析計を用いて解析する、②そのアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換した変異体を作製し、実際にそのアミノ酸がRFPによるSUMO化を受けているか否かを確認、③逆に、RFPがUSP7によるp53やMDM2 の脱Ub 化に影響を与えるか否かをUV 照射・非照射細胞にてRFP強制発現あるいはノックダウンし検討、④RFPとUSP7の相互作用がp53、MDM2のSUMO化や脱Ub化に重要であるか否かを明らかにする、等を行う。ただし、RFP-USP7の相互作用領域については現状遅れが生じているため、最優先で相互作用領域の絞り込みを行う。RFPとUSP7の相互作用領域の絞り込みが完了し次第、がん細胞におけるRFP-USP7相互作用のDNA損傷耐性に与える影響を評価する。また、ヌードマウスを用いた抗がん剤耐性評価、およびヒトがん検体におけるRFP、USP7の発現評価および臨床情報との相関関係の検索についても実施予定である。
p53のSUMO化サイトを検索するため、25年度に実施予定であった実験(質量分析計を用いた解析等)が遅れており、26年度に実施することになったため。質量分析計による解析には名古屋大学医学教育研究支援センター所有の質量分析計を用いるため、その使用料および試薬が必要となる。ヌードマウスを用いた抗がん剤耐性評価、およびヒトがん検体におけるRFP、USP7の発現評価および臨床情報との相関関係の検索を実施する。
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Cancer Science
巻: - ページ: 印刷中
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