研究課題
若手研究(B)
今年度は、Fbxl10トランスジェニックマウス(Tg)の造血細胞を用いて、Fbxl10の高発現の確認、ヒストンメチル化の変化、遺伝子発現変化、標的遺伝子の同定について検討を行った。まず、Fbxl10 Tgとコントロールマウスの造血幹細胞を用いてFbxl10 mRNAの発現解析を行ったところ、Tgの造血幹細胞においてコントロール造血幹細胞の約10倍の発現上昇を認めた。蛋白質レベルでこの上昇の確認を試みるため、Fbxl10 Tgに発症した腫瘍細胞に対して、Fbxl10 cDNAにタグとして用いた抗Flag抗体を用いてウエスタンブロット(WB)を行ったところ、目的の大きさのバンドを認め、腫瘍においてもFbxl10が高発現していることが明らかとなった。また、腫瘍のlineageを解析するために各種抗体を用いたFACSとJHおよびTCRβプローブを用いたSouthern blotを行い、腫瘍はmyeloidまたはB-cell性の腫瘍であることを明らかとした。また腫瘍細胞におけるヒストンメチル化の変化について、H3K36とH3K27の抗メチル化ヒストン抗体を用いてWBを行い、Fbxl10 Tgの造血前駆細胞において、H3K36のメチル化の低下を認め、Fbxl10はH3K36に対する脱メチル化酵素として機能していることが示された。さらに造血幹細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行い、Fbxl10 Tgにおいては、Nsg2(Neuron specific gene 2)遺伝子と酸化的リン酸化経路の遺伝子群の発現が上昇していることを明らかとした。抗体を用いたChIP解析により、Fbxl10はNsg2遺伝子と酸化的リン酸化経路のいくつかの遺伝子に結合を認め、直接作用により遺伝子発現を亢進していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
Fbxl10 Tgの造血幹細胞と腫瘍細胞においてFbxl10の高発現を確認し、さらにH3K36を含めたヒストンリジン残基のメチル化の変化についても確認出来た。また、Fbxl10 Tgおよびコントロールの造血幹細胞を単離し、トランスクリプトーム解析により網羅的遺伝子発現解析を行いNsg2遺伝子と酸化的リン酸化経路の遺伝子群の発現上昇が確認出来た。
今後は、Fbxl10の過剰発現によるH3K36のメチル化の低下とNsg2遺伝子および酸化的リン酸化経路の遺伝子群の発現上昇についてさらに解析を行い、Fbxl10 Tgの白血病発症における機能的関連について明らかにする。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
PLOS ONE.
巻: 9(1) ページ: e87425
10.1371
FEBS Letters.
巻: 587(10) ページ: 1529-1535
10.1016