研究課題/領域番号 |
25830085
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石川 千恵 琉球大学, 亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構, 助教 (90542358)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 成人T細胞白血病・リンパ腫 / HTLV-1 / インターフェロン調節因子(IRF)5 / Tax |
研究概要 |
本研究ではインターフェロン(IFN)調節因子(IRF)の一つIRF5の、ATLL発症・進展における関与を解明するべく検討を進めている。IRF5の発現についてT細胞株で検討したところ、mRNA及びタンパク質レベルでHTLV-1感染T細胞株に恒常的な発現を認めた。共焦点レーザー顕微鏡及び細胞分画のタンパク質抽出後のウェスタンブロット法を用いて検討した結果、IRF5は主に核に局在していた。IRF5の各transcriptional variantsの発現を検討したところVariant1/4はすべての感染細胞株に発現が認められ、Variant2はいずれの感染細胞株にも発現を認めなかった。Variant3は感染細胞8株のうち5株で発現を認めた。 HTLV-1感染やウイルス遺伝子発現によるIRF5発現誘導を検討した。試験管内HTLV-1感染モデルでは感染によるT細胞でのIRF5の発現誘導が確認された。JPX-9細胞を用いた検討ではウイルス遺伝子Taxにより、IRF5の発現がmRNA及びタンパク質レベルで誘導された。Taxにより誘導されるIRF5はVariant1/4及びVariant3であった。Variant3のプロモーター領域を含むルシフェラーゼ発現ベクターを用いたレポーターアッセイでは、Tax用量依存性のIRF5プロモーターの転写活性の増強が確認できた。 マイクロアレイ解析のため、IRF5発現ベクターを遺伝子導入したJurkat細胞株を作成した。解析の結果、IRF5によるTNF-α(7.24倍)やlymphotoxicin-β(5.84倍)といったTNFファミリー遺伝子の発現誘導が確認され、現在これら遺伝子の発現誘導機序を解析中である。なお、IRF5発現抑制による影響を検討したが、細胞増殖能への影響は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに次の4項目について検討を終えている。(1)HTLV-1感染T細胞株におけるIRF5の発現。(2)HTLV-1感染やウイルス遺伝子によるIRF5発現誘導。(3)IRF5の各transcript variantの発現。(4)RNAi法を用いた発現抑制による細胞増殖への影響。(5)過剰発現系における細胞増殖への影響及びマイクロアレイ解析。なお、IRF5遺伝子プロモーター領域におけるTax応答配列の同定を試みているが、まだ十分な成果は得られていない。上記の研究成果は、関連学会で発表された。以上より、平成25年度の研究実施計画はほぼ達成しており、平成26年度に計画している項目についても一部、検討を終えているため、本研究課題は現在までおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロアレイ解析で確認された事項では、TNFファミリーを含めたIRF5誘導性遺伝子について、その発現誘導機構の解析を進める。TNFファミリーの遺伝子はNF-κBによっても制御されているため、IRF5と他の転写因子との相互作用を検討する。また、Taxを含めたウイルス遺伝子産物とIRF5との相互作用の解析を進める。さらに、ATLL発症危険群予測因子としてのIRF5の可能性やIRF5を標的とした治療の可能性について検討する。最終的には本研究課題で得られた結果をとりまとめ、成果の発表を目指す。ATLL以外の悪性リンパ腫におけるIRF5の発現についても検討する。
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